高知新聞 【就職氷河期世代】着実なサポートを素早く (2/9)

【就職氷河期世代】着実なサポートを素早く
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高知新聞 2020年2月9日

 「社会に見捨てられたと思っていたけど、自分のまちが手を差し伸べてくれたことで勇気が出た」
 バブル経済崩壊の影響で就職難だった30代半ばから40代半ばの就職氷河期世代を対象に正規職員を中途採用する試験を昨年、兵庫県宝塚市が実施した。
 500倍を超す高倍率になった試験の後、宝塚市長は不採用の女性からそんな言葉を聞いたという。
 正社員として採用されずに不安定な生活を余儀なくされてきた同世代の多くにとって、「見捨てられた」という思いは共通しているのかもしれない。
官庁や自治体、企業がこの世代に対する中途採用を可能な限り増やすとともに、公的な就労サポートの強化もあらためて求めたい。
 政府は、昨年6月の経済財政運営の指針「骨太方針」で集中的な支援を打ち出した。非正規労働や引きこもりの状況にある約100万人を対象に、3年間で正規雇用を約30万人増やす計画だ。
 非正規で働かざるを得ない人が続出したこの世代は、職場で能力を十分身に付けられなかったり、自信を失って引きこもりになったりした人も少なくないとされる。
 さまざまな働き方があるとはいえ、望んで非正規雇用を選んだ人は多くないはずだ。社会に出るタイミングが違っただけで、職業や将来設計に差が出るとすれば世代間に不要な軋轢(あつれき)を生みかねない。
 具体的な支援策の一つとして政府は国家公務員の中途採用を増やす方針だ。宝塚市には遅れたものの、厚生労働省が先日実施した採用試験も倍率は約140倍になった。
 予算や職員の採用計画など省庁、地方自治体ともに制約はあるにせよ、可能な限り足並みをそろえて採用枠を積極的に広げてほしい。
 正規雇用の拡大へ、政府は新たな交付金制度を創設する予定だ。都道府県や市町村ごとに計画を策定。職業訓練や就職説明会を受ける際の交通費の支給や、地元企業への就職を前提に奨学金の返済支援などを行う計画という。
 全国のハローワークにも窓口を設け、就職相談から職場定着までのサポート体制を整える。求職に有利な資格習得コースを設け、就職まで支援する。採用に積極的な企業への助成金も拡充する方針という。
 目標とする正規職員30万人は、公務員の中途採用だけでは難しい。人手不足が深刻な民間業種もあり、企業が採用を増やしやすいような支援や人と企業をつなぐ公的マッチングを充実させたい。
 引きこもり状態にある人には、個別に訪問して相談に乗る支援員を地域に配置する計画がある。引きこもりの人がすぐに就業するのは難しいケースが多い。ボランティア活動への参加など働く機会を徐々に広げていく支援は大切だ。
 「社会に見捨てられた」―。そんな思いを抱く人が増えないよう、きめ細かいサポートを続けてほしい。
 

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