第24回 過労自殺はホワイトカラーにとりわけ多い

1988年4月、大阪過労死問題連絡会は「過労死シンポジウム」を開催し、「過労死110番」と銘打って、労働者や家族から電話相談を受付けました。また同年6月には東京、大阪、札幌、仙台、京都、神戸、福岡で、過労死110番全国ネットの一斉相談がスタートしました。「過労死」という言葉が時代を映す現代用語として一挙に広まったのもこの年のことです。
それから今日までに20年が過ぎました。しかし、過労死はいっこうに減っていません。それどころか、表1に見るように、過労自殺の多発を含め、増えてさえいます。バブル崩壊後の10年以上にわたる長期不況は、失業率の動きで見れば、1998年から2002年の間がもっとも深刻な様相を示しました。過労自殺が増えたのはこの時期です。その後2007年まで「景気回復」が言われましたが、この間も、人員が減らされたまま仕事が増え、雇用の非正規化が進んで正社員が絞り込まれて、過重労働が増悪したことが、過労死、過労自殺を頻発させてきました。
 
表1 過労死・過労自殺などの労災認定状況
年度
 
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
脳・心臓疾患
請求件数
493
617
690
819
742
816
869
938
931
認定件数
81
85
143
317
314
294
330
355
392
うち死亡
48
45
58
160
158
150
157
147
142
精神障害等
請求件数
155
212
265
341
447
524
656
819
952
認定件数
14
36
70
100
108
130
127
205
268
うち自殺
11
19
31
43
40
45
42
66
81
(出所)厚生労働省「脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況」各年。
(注)脳・心臓疾患、精神障害とも業務により発症した事案。自殺は未遂を含む。
 
22講で見たように、ホワイトカラーはブルーカラーに比してサービス残業が長い。それが一因となって、ホワイトカラーの過労死、とりわけ過労自殺が多発しています。厚生労働省の2007年度「脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況」によれば、過労死(脳心臓疾患等)も過労自殺(精神障害等)も、表2に示したように、多種多様な職種で発生していますが過労死にかかわる労災認定の比率は、ホワイトカラーとブルーカラーとでは大差はありません。しかし、過労自殺にかかわる認定件数は、ホワイトカラー職に集中してます。
このことはホワイトカラーが近年の情報通信技術による労働の過重化や、成果主義の普及によるジョブストレスの増大にさらされてきたことと無関係ではないと考えられます。
 
表2 2007年度過労死・過労自殺の職種別請求・認定件数
 
過労死
過労自殺
職種
請求件数
認定件数
請求件数
認定件数
専門・技術職
131
71
243
75
管理職
85
51
58
18
事務職
98
33
210
53
販売職
97
43
85
29
ホワイトカラー比率
44.1
50.5
62.6
65.3
サービス職
119
29
82
10
運輸・通信職
182
93
68
22
生産・労務職
175
57
191
60
ブルーカラー比率
51.1
45.7
35.8
34.3
その他
44
15
15
1
合計
931
392
952
268
(出所)表1に同じ。

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