第27回 休講脱線 今年の2月から5キロ太ったわけ

昨年12月から今年1月末まで6週間入院して、当初58キロあった体重が50キロになりました。持病の心臓弁膜症で胸部に溜まった水を食事療法と利尿剤で抜いた分だけ軽くなったのです。医師からは減った体重を退院後も維持するように言われていました。

にもかかわらず、それから8か月たち、久しぶりに体重を測ったら55キロになっていました。原因ははっきりしています。秋になって食欲が増したというより、このところ深夜まで原稿書きに追われ、毎晩のように午前1時から2時ごろにラーメン、うどん、お茶漬けなどを食べているからです。

『栄養と料理』というレシピ付きカラー写真が満載された雑誌があります。その本年12月号に残業で夜遅く帰る人のための「夜10時過ぎのメタボ予防食」が特集されています。誌面には残業実態について私の場違いな話も載っていますが、教えられたのは、早稲田大学の柴田重信教授(薬学博士)の「時間栄養学入門」です。これを読んで、夜食をとり続けるとなぜ太とるのか分かったような気になりました。

柴田教授によると、遅い夜食が太りやすいのは、第1に、夜間は活動量が少ないうえに寝るまでの時間が短いので、エネルギーの消費量が少なく脂肪として蓄積されやすいからです。第2は、食事をした際、消化・吸収にともなって体が熱を発散するときに消費されるエネルギー(DIE)のせいです。DIEは、朝が最も高く、夜中は最も低いので、夜中は朝食と同じ量をとっても、太りやすいと考えられています。第3は、BMAL-1(ビーマルワン)の影響です。これは体内時計を調整する機能をもつたんぱく質で、午後3時がいちばん少なく、午後10時から午前2時ごろが最も多いとか。この量が多くなるほど、脂肪をため込み、太りやすいそうです。

私が最近太った原因はもう一つありました。それは睡眠不足です。このごろは深夜2時から3時の間に寝て、朝は8時過ぎに起きる日が続いています。柴田教授によると、睡眠時間が短くなると、一方で空腹感を促すグレリンと呼ばれる物質が分泌され、他方で食欲をおさえるレプチンという物質が減少する。その結果、過食になる恐れがあるそうです。

原因が分かった(ような気になった)だけでも人間は安心します。要は、夜食を取らなければならないほど遅くまで仕事をせず、しっかり睡眠をとればいいのです。しかし、それができれば苦労はしません。まっこと、「言うは易く行うは難し」です。

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