「あなたは何のために働きますか」と問われたらどう答えますか。「なぜ働きますか」という質問であれば、たいていの人は「生きていくため」あるいは「賃金を得るため」と答えるでしょう。
同じような質問でも少し角度を変えて、「何のため働きますか」と訊かれると少し考えて、「社会の役に立ちたいから」とか、「自分の能力を生かしたいから」とか答える人もいるでしょう。
内閣府が「国民生活に関する意識調査」のなかで、「働く目的は何か」を、「お金を得るために働く」、「社会の一員として、務めを果たすために働く」、「自分の才能や能力を発揮するために働く」、「生きがいをみつけるために働く」、「その他」、「わからない」の選択肢に分けて質問しています。下の表に近年の調査結果を示しておきました。回答者数は年によってちがいますが、だいたい6000人から7000人です。性別、年齢別にも見るといいのですが、その表は割愛します。
まず気づくのは、1997年に比べて2008年は「お金を得るために働く」と回答している人の割合が高くなり、「社会の一員として、務めを果たすために」と答えた人や、「生きがいをみつけるために」と答えた人の割合が低くなっていることです。この変化は小泉構造改革が始まった2001年に起こり、それ以降はほぼ同じ傾向が続いています。
表 働く目的は何か (単位:%)
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お金を得るために
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社会の一員として、務めを果たすために
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自分の才能や能力を発揮するために
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生きがいをみつけるために
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その他、わからない
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年
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%
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%
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%
|
%
|
%
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2008
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50.1
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13.9
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9.9
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22.0
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4.0
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2007
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49.4
|
14.1
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9.6
|
22.2
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4.7
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2001
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49.5
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10.0
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9.0
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24.4
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7.1
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1999
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33.7
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16.9
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10.9
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35.3
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3.2
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1997
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34.0
|
16.9
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12.7
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33.1
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3.3
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(出所)内閣府が「国民生活に関する意識調査」
このことは人々が経済的ゆとりをなくし賃金を得ることに懸命になってきたことや、仕事がきつくなって働きがいや生きがいを実感できなくなってきたことを反映しているように思われます。
昨年の『労働経済白書』は、働く意識の変化を分析して、賃金の抑制や、成果主義の浸透で、生活や仕事に満足感を持つ者の割合が低下していることを明らかにして話題を呼びました。同白書によれば、「若年層の仕事に対する満足感は低く、若年層を中心に組織や仕事内容に対する不満から自発的な離職を惹起する傾向がある。また、中高齢層では、長期勤続者の中で不満を高めている層があり、仮に転職するとしても、賃金が大きく低下するなど、継続就業者、中途採用者のいずれの雇用管理にも大きな課題がある」と指摘しています。
このことは若年層も中高年層も、労働環境が悪化するなかで、生きがい、働きがいを失ってきていることを物語っています。とくに最近のように雇用環境が悪化し、大量解雇が広がっているもとでは、「働く場の確保」が先決で、「働きがい」どころではないという状況もあります。そう考えると、働きがいを実現するためにもいまは雇用を確保することが重要です。