第191回 書評㉑ 植田和弘・梶山恵司編著『国民のためのエネルギー原論』

書評 植田和弘・梶山恵司編著『国民のためのエネルギー原論』
(日本経済新聞出版社、2000円+税)

『週刊エコノミスト』2012年2月7日号

遅れる日本のエネルギー計画
ドイツとの比較で浮き彫りに

編者の植田は、環境経済学者として、東日本大震災復興構想会議の専門委員を務めた。梶山は、09年11月より11年10月まで菅首相のもとで政策立案にあたった。

福島原発事故後、菅首相は、梶山に今後のエネルギー政策についての検討を指示した。それをきっかけに植田が中心になって、日本のエネルギーシステムのあり方についての研究会が発足した。そのメンバーを中心に11人で共同執筆したのが全11章からなる本書である。

本書ではエネルギーにおける熱利用と電力、地域資源としての自然エネルギー、エネルギー戦略、再生可能エネルギー(再エネ)、エネルギー消費削減、発電コスト、買い取り制度、発送電分離、電力自由化、気候変動政策、エネルギー行政、地域再生などが、日独比較を基軸に考察されている。

読み終えての感想はSUSとBAUとの際だった対照に集約される。

SUSとは再エネを拡大し、持続可能(sustainable)な社会づくりを進めることをいう。
BAU(business as usual)とは、従来通りやり方の意で、経済成長優先・大企業中心・エネルギー多消費の経済運営を続けるこという。

本書のどの章を読んでも、ドイツはSUSを志向して、原発廃止と再エネ転換の実績を着実に積み上げていることに驚かされる。日本は、BAUにしがみついて、いまだに脱原発と再エネ転換に踏み切れないでいることに唖然とする。

日本の立ち後れは明日の計画だけではない。ドイツは、過去20年間の実績でみても、エネルギー消費を6%削減しているが、日本は逆に6%増加させている。ドイツは1次エネルギーに占める再エネ比率を9.4%まで拡大させているが、日本はわずか1%に留まっている。

本書から、エネルギーシステムに関しては、政策当局の適正な規制がなければ、自由化もありえないことも教えられた。

日本では、電力会社は発送電一体の地域独占であるために、発電市場を自由化しても、小規模会社の送電網への接続が制限され、再エネを拡大することは難しい。

しかし、ドイツは、90年代末から段階を踏んで発送電一体の電力会社から送電を分離した。その結果、地域分散型の発電会社による送電網の利用が可能になったことが、固定価格での電力買い取り制度と相まって、再エネの普及を一挙に加速した。

ドイツのエネルギー政策から学ぶためにもお薦めの一書である。

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