本ブログの「情報資料室」の記事にあるように、4月18日の朝日新聞は「賃金構造基本統計調査」(「賃金センサス」)を利用した第一生命経済研究所の分析をもとに、「働く人の平均時給2228円 09年、14年ぶり低水準」と報じています。
記事には説明がありませんが、この平均時給は、常用労働者のうち一般労働者についてのデータから計算されたものです。パート・アルバイトの短時間労働者を含めるとは平均時給は1954円に下がります。短時間労働者だけをとると、平均時給は1002円です。わずかにある「年間賞与その他特別給与額」を含めても、1035円にしかなりません。
この平均時給を求める際の労働時間は、厚労省「賃金構造基本統計調査」の対象期間である2009年6月分の労働時間(176時間)を12倍した2112時間です。年収470万5700円÷2112時間=2228円。ここで注意をしなければならないのは、これには賃金が支払われなかった残業時間、すなわちサービス残業は含まれていないことです。
同じく政府統計でも、総務省「労働力調査」は労働者調査で、サービス残業も含む労働時間を集計しています。これによれば、2009年6月調査の週労働時間(非農林業雇用者・常雇)は43時間でした。これを52倍した年間労働時間は2236時間になります。これをもとに計算すると、平均時給は213円下がって、2015円になります。年収470万5700円÷2236=2105円。朝日の記事にはこの点へのコメントもありません。
朝日の記事は最後に、<職業・男女別では「大学教授・男性」の時給が最も高く、5985円。「医師・男性」が5708円、「パイロット・男性」が5608円、「公認会計士、税理士・男性」が4961円と続く>と述べています。私は最も高いとされる大学教授ですが、この計算のもとになっている大学教授の年間労働時間は、月162時間×12ヵ月=1944時間、残業ゼロとなっている点で大いに疑問です。
文科省の調査によれば、小学校の教員の2006年7月の平均労働時間は週当たりでは60時間36分でした。大学の教員も私の知る社会科学系の教員は在宅の仕事を含めると週60時間は働いています。年間でざっと3000時間として計算すると時給は5985円ではなく、3878円になります。平均時給に限ったことではありませんが、統計数字には意外なマジックや裏があるものです。