第139回 原子炉事故から見えはじめてきた原発作業員の雇用実態

3月11日の原発事故からまもなく3か月になろうとしています。原子炉の電源喪失とメルトダウンにともなう核危機はいまだ収束する目途さえ立っていません。そのなかで懸命な冷却と汚染処理の作業が続けられます。

福島第1原発の1号機にとどまらず、2号機と3号機でも、核燃料が溶け落ちるメルトダウンがあったと東電が発表したのは、いずれも実際に起きた日から2か月後のことでした。これに象徴されるように、東電も政府も、情報を小出し、後出し、ひた隠しにしているために、事故現場の汚染状況や作業環境については、いまだに不明なことだらけです。それでも、メディアの報道や当事者の体験談などによって、ようやく見えはじめてきたことがいくつかあります。今回はその一つである、原発作業の下請け構造について書きます。

「週刊東洋経済」4月23日号によると、日本の原発作業員のうち、電力会社の社員は1万人弱なのに対して、下請け労働者は7万5000人(2009年度、原子力安全・保安院)。福島第1でも、1100人強の東電社員に対して、下請け労働者は9000人を超えています。5月31日の「朝日」の記事では、福島第1の「雇用者数」は、昨年7月現在で6778人、そのうち東電社員は1087人で、残る5691人は407社の「協力企業」と呼ばれる下請け会社の労働者です。

「朝日」が「雇用者数」と書いているのは不正確です。下請け労働者は下請け会社が雇用しているのであって、東電が雇用しているわけではありません。「東洋経済」の記事には、通常、原発作業の現場を取り仕切っているのは、2次、3次下請けの正社員たちだ、とあります。

震災前にハローワークに出されていた地元零細企業の福島第一の求人では、日給9000円から、学歴、年齢、スキル・経験などは、すべて「不問」とされている、といいます。こういう下請け労働者がどういう雇用身分なのかは不明です。また東電や原発メーカーの社員が下請け労働者を指揮命令したり、上位の下請け会社の労働者が下位の下請け会社の労働者を指揮命令したりすれば、違法な「偽装請負」になります。

しかし、そうした違法がどこまでまかり通っているのかもわかりません。ただ、労働条件が劣悪であることは1万円を割るような日給からも明らかです。同じく「東洋経済」の記事によれば、下請けは5次、6次、さらには7次、8次であることもザラで、原発労働者の実態を撮り続けてきたの樋口健二氏が言うには、東電が日当7万円で発注するのに末端の労働者は日当1万円にしかならず、ピンハネは8割にもおよぶそうです。

その樋口氏が、POSSE第11号に「原発が葬り続けた被曝労働者たち」という論考を寄せています。それによれば、原発労働の元請けは、東芝、日立製作所、三菱重工の原発メーカーで、その下に下請け、孫請け、ひ孫請け、人出し業(親方)とぶら下がっています。末端の「人出し業(親方)」は、手配師あるいは周旋屋よろしく、最下層労働者を集めて自己の配下に置き、鉱山や工場に送り込んだ戦前の親方制度(戦後の職業安定法で禁止された労働者供給事業)を想起させます。

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