第142回 原発災害の惨禍から立ち上がる福島に学ぶ

いつもはあまり気に掛けることない社説ですが、本日の朝日新聞の社説はめずらしく目に留まりました。それは、「福島とともに−−脱原発ビジョンに学ぶ」と題して、「福島県復興ビジョン検討委員会」がまとめた「原子力に依存しない、安全・安心で持続的に発展可能な社会づくり」の基本方針(案)を紹介し、「福島を助けようと言ってきた私たちが、逆に福島に教えられている」と評価しています。

実は、この基本方針については、同検討委員会座長代行の山川充夫氏(福島大学前出教授)から、昨日(日)の朝、福島駅前のホテルで、詳しい説明を受けたばかりでした。私一人ではなく、私が所属する経済理論学会代表幹事の八木紀一郎氏(摂南大学教授)といっしょでした。復興ビジョンを策定するという、たいへん大きな、しかもきわめてお忙しいお仕事の話をお聞きして、よくもまあこの時期に貴重なお時間を割いてくださったものだと身がすくむ思いがしました。

基本方針は復興ビジョンを次のように明確にしています。

○今回の災害で最も深刻な被害を受けたふくしまの地においては、「脱原発」という考え
方の下、原子力への依存から脱却し、再生可能エネルギーの飛躍的な推進を図るとともに、省エネルギーやリサイクルなどを強力に推進し、環境との共生を図る。

○同時に、多様なエネルギーの組み合わせ等により地域でエネルギー自立を図る多極分散型のモデルや、再生可能エネルギー関連産業などの集積により環境との共生と経済的な活力が両立するモデルを世界に先駆けて提示していく。

これは、内閣の下に置かれた「東日本大震災復興構想会議」が6月11日に発表した、「復興への提言」(骨子)と比べると、遙かに爽やかな未来志向のビジョンです。復興構想会議は、原発災害との関連では「再生可能エネルギーの利用促進とエネルギー効率の向上」に触れていますが、原発依存からの脱却や、従来の経済成長優先戦略やそれがもたらしたエネルギー多消費型の産業構造の見直しや転換には触れていません。

新聞でも報じられているように、福島第一原発から20キロ圏外で放射性物質に汚染された「がれき」について、環境省は福島県内に新設する最終処分場に埋め立てたいという方針を同県に伝えたところ、当然にも県から拒否されたそうです。福島を核汚染がれきの最終処分場にするという国の方針には、原発周辺に長期にわたって居住できない状態に置かれた人々のふるさとへの帰還を可能にする努力や、ふるさと再生への配慮は微塵も見受けられません。

それだけに、「避難を余儀なくされた県民がふるさとに戻ることができた日にふくしまの復興が達成されるという思いを県民すべてが共有しながら復興を進める」ことを明記した福島県福島県復興ビジョン検討委員会の基本方針に深い共感を覚えます。

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