4月23日の「朝日新聞」に、ユニクロが正社員の賃金を全世界同一にするという記事がでています。記事が指摘しているように、「世界同一賃金」体系が導入されれば「新興国に比べて割高な(日本の)賃金が下がる可能性がある」ことは火を見るより明らかです。ユニクロを経営するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長自身、あけすけに次のように語っています。
「将来は、年収1億円か100万円に分かれて、中間層が減っていく。仕事を通じて付加価値がつけられないと、低賃金で働く途上国の人の賃金にフラット化するので、年収100万円のほうになっていくのは仕方がない」(朝日デジタル4月25日、インタビュー記事) 。
ユニクロが従業員に対してどんなに酷い働かせ方をしているかは、「週刊東洋経済」の今年3月4日号の風間直樹記者のルポに詳しくでています。本ブログの「情報資料室」にアップしておきましたので見てください。
横田増生著『ユニクロ帝国の光と影』(2011、文藝春秋)によれば、ユニクロの全従業員約3万人のうち正社員は3000人だそうです。今回、「世界同一賃金」が適用されると言われているのは、全体の1割の正社員(それも一部)ですが、残りの9割の非正社員はどうなっているかを知りたくて、ネットで調べてみました。
なぜか、ユニクロでは有期雇用で低時給の非正規労働者を「パート」といわず、「アルバイト」というようです。下に全国各地のユニクロ店の「カジュアル衣料販売スタッフ」のアルバイト募集の時給を貼り付けておきます。
これをみると短期アルバイトの時給は1100円から800円まで幅があります。地方の店舗はたいてい800円台になっています。800円だと、年収は、パートに多い年間1200時間なら100万円を切ります。たとえフルタイム並みに年間2000時間働いても、手取りで160万円にしかなりません。
他の会社も同様でしょうが、バイトの時給は「全国同一賃金」ではありません。その理由は、1)会社にとっては地域別最低賃金をクリアする限り賃金は安いほど望ましいが、2)人手が必要である以上はなんとか雇える額を払わざるを得ないからです。いずれにせよ、ユニクロの「世界同一賃金」は、大半のユニクロ労働者にとっては、年収100万円、時給は地域別最低賃金で働かざるをえなくなることを意味していると言えます。
現時点では、地域別最低賃金は、下記の都道府県のなかでは東京都850円、大阪府800円、愛知県758円、香川県674円、秋田県・宮崎県・沖縄県653円となっています。 東京には1100円の店舗もあるようですが、短期アルバイトの時給はたいてい1000です。最低賃金が一番低い沖縄などの地方は800円です。この200円の差は最低賃金の差にほぼ対応しています。もし、最低賃金が引き下げられるようなことがあれば、それに応じてユニクロの賃金も引き下げられるでしょう。もちろん、逆も真であって、最低賃金が上がれば、ユニクロも賃金を上げざるを得なくなります。
いずれにしても、ユニクロのアルバイト時給が「全国同一」でないことは言うまでもありません。
東京都 渋谷道玄坂店
[長期アルバイト・準社員]時給1100-1350円
[短期アルバイト]時給1100円
東京都 杉並高井戸店
[長期アルバイト・準社員]時給1000-1250円
[短期アルバイト]時給1000円
愛知県 名古屋栄店
[長期アルバイト・準社員]時給1050-1300円
[短期アルバイト]時給1050円
大阪府 豊中南桜塚店
[長期アルバイト・準社員]時給950-1200円
[短期アルバイト]時給950円
香川県 ゆめタウン高松店
[長期アルバイト・準社員]時給900-1150円
[短期アルバイト]時給900円
秋田県 十和田店
[長期アルバイト・準社員]時給800-1050円
[短期アルバイト]時給800円
宮崎県 宮崎北店
[長期アルバイト]時給800-1050円
[短期アルバイト]時給800円
沖縄県 イオン具志川SC店
[長期アルバイト・準社員]時給800-1050円
[短期アルバイト]時給800円
(4月26日追加・訂正)