十把一絡げという言葉があります。十羽一烏(ジッパヒトカラス)とは言いません。とはいえ、カラスという鳥を一種類のように思っている人もいるようです。
街中や近くの野山でよく見るのは、ハシブトガラス(57cm)とハシボソガラス(50cm)の二種類です。これくらいはご存じですね。人の隙を狙って買い物袋などから食べ物を失敬するのはハシブトのほうです。
しかし、ブトとボソだけでなく、実は、日本で観察記録のあるカラス科の鳥は11種いると言われています。探鳥をしていると出会うカラスの仲間にはワタリガラス(63cm)、ミヤマガラス(47cm)、コクマルガラス(33cm)などがいます。カササギ(カチガラス)、ホシガラス、カケスなどもカラス科です。
ワタリガラスは、日本では北海道に渡ってきますが、イギリスの観光名所、ロンドン塔の守護鳥として有名です。特徴はなによりも大きさです。カラス仲間では最大級で、63cmもあります。私は沖縄で満開のデイゴの樹に止まるオサハシブトガラスを見ました。これはハシブトの亜種ですが、大きさはハシブトより10cmも小さく、違いは一目瞭然です。カササギは韓国では吉鳥とされています。佐賀平野を中心に分布しているので佐賀県の県鳥になっています。
話は飛びますが、壺井栄原作・高峯秀子主演の映画「二四の瞳」で最も歌われ、BGMとしても流れるのはよく知られた童謡「七つの子」です。「烏なぜ啼くの」で始まりますが、なぜ啼くのでしょうか? 「カラスの勝手でしょう」という説もあります。歌では山に可愛い七つの子があるからです。しかし、ハシブトもハシボソも1回に生む卵は5個までなので七羽も雛がいることはありえません。作詞者の野口雨情がこれを作ったとき、息子が七歳だったので七つの子だという珍説もあります。それはないとしても、なぜ七羽の子ではなく、七つの子なのでしょうね?
注1:ここに書いたカラスの画像についてはこちらをご覧ください。http://homepage3.nifty.com/shibalabo/crow/japan/japan.htm
注2:本年4月に第1号が出た「ミニ季刊誌ASU-NET」に寄稿した鳥エッセイを加筆して転載しました。