第274回 総選挙を前に若い有権者のみなさんに訴えます

2年前に続いてまた師走の総選挙です。自民党が大勝し、民主党が惨敗した前回の総選挙の投票率は59.3%でしたが、年齢別では60代が74.9%で最も高く、20代はその半分の37.9%で最低でした。

2013年7月に行われた前回の参議院選挙でも20代の投票率は60代の半分でしたが、同じ20代でも、25〜29歳は35.4%なのに、20〜24歳は31.2%で、4.2ポイントも低くなっています。

広い意味では20代だけでなく30代も若者といえます。しかし、前回の総選挙における30代の投票率は50.1%で、20代より12.2ポイントも高くなっています。この点を考慮して、ここでは20代をもって低投票率の若者を代表させることにします。

選挙権は20歳以上の誰もが有する参政権です。若者の投票率が低いと、若者の声が政党や議会に届かず、若者が政治から取り残され、ひいては不利益を被ることになりかねません。

今度の総選挙では、各党がどのような若者向けの政策をもっているか、またどの党が若者の置かれた状態を改善することに力を入れているかをよく見て投票することが求められています。その場合、私は次の5つの課題が重要だと思います。

1) 非正規雇用の拡大に歯止めを 「就業構造基本調査」によれば、2012年時点のパート・アルバイト・契約社員・派遣などの非正規労働者の比率は20代全体では36%ですが、20歳から24歳に限れば45%です。今度の選挙では雇用の非正規化の流れを押し戻さねばなりませんが、相変わらず雇用の規制緩和を進めることに熱心な政党に非正規労働者の増加に歯止めを掛ける政策を期待することはできません。

2) 最低賃金の大幅引き上げを 非正規労働者の多くは勤勉に働いてもまともに生活できない低い時間賃金しか支払われていません。これを底上げするには最低賃金を大幅に引き上げるしかありません。現在、全国平均の780円をせめて1000円に引き上げるべきです。学生のアルバイト時給もこれによって上がります。正規労働者にとっても初任給の引き上げ効果があります。

3) 雇用保険の適用拡大を 非正規労働者の多くは雇用保険に未加入で、失業しても失業給付を受けられずにいます。ILO(国際労働機関)の2012年の調査によれば、日本では失業者の79%が失業給付を受け取れずにいますが、ドイツでは不支給の比率は2%にすぎないそうです。この改善は非正規比率の高い若者にとってはとくに重要です。

4) 奨学金の抜本的拡充を 現在、大学生の2人に1人は奨学金を借りています。その実態は奨学金というより利子がついて回る学生ローンです。学部卒の場合、平均300万円もの借金を抱えて社会人としてのスタートを切ることになります。このローン地獄を解消するには奨学金の無利子化、返済減免制度および給付制度の創設が急がれます。保護者の賃金下落・所得低下にともなう仕送りの減少が続いているだけに、学生の学ぶ権利を保障するには奨学金制度の抜本的拡充が必要です。

5) ブラック企業の撲滅と過労死の防止を 1日15時間も残業させて残業代を支払わないような酷い働かせ方をして若者を使い潰す企業が社会的な批判を浴び、厚生労働省も指導監督に乗り出すようになってきました。過重労働やパワハラによる若者の過労死と過労自殺が跡を絶たないなかで、2014年6月に、過労死等防止対策推進法(略称・過労死防止法)が超党派の議員立法によって全会一致で成立しました。どちらも声を上げて政治を動かすことの重要性を私たちに教えてくれています。

選挙は声を上げるチャンスです。今度の総選挙では一人でも多くの若者が選挙権を行使して、政治に参加してほしいと思います。

この記事を書いた人