第10回 年休を誰でももっと取りやすい制度に

 前回、厚労省の「就労条件総合調査」から、年休(年次有給休暇)の取得率は1980年には6割を超えていたが、最近は5割を切っていると言いました。しかし、これは労働者の4人1人を占めるパート・アルバイトなどの短時間労働者を除いた数字です。また。労働者の3人に1人を占める規模30人未満の零細企業も調査対象から除かれています。

 パート・アルバイトの多くは年休をほとんど取っていません。零細企業労働者の年休取得率が著しく低いことは統計がなくともよく知られています。こうした事情を含めれば、日本の労働者の年休取得率は、4割台どころか3割台に落ちるのではないかと考えられます。

 労働基準法では、アルバイトでも雇い入れの日から6か月間継続して勤務し、所定労働日の8割以上出勤している場合は、時間と日数と継続期間に比例して年休を取得できることになっています。例えば、1日4時間で、週4日、6か月の場合は7日年休がとれます。2004年に私の指導するゼミナールで、関西大学経済学部の学生を対象にアルバイトの実態調査を行い、年休の法律知識と取得状況を調べました。その結果、85%がアルバイトでも年休が取れることを「知らない」と答え、90%は「取得したことがない」と答えました。回答者の67%がアルバイトを「継続的に行っている」状況からみると、年休を「知らない」「取れない」人が非常に多いことがわかります。、

「知らない」のは使用者が知らさないからですが、制度がきわめて分かりにくいことも「知らない」状況を生んでいます。フルタイム(週30時間以上)の場合の付与日数は、6か月の継続勤務で初年度は10日、以後2年6か月までは1年ごとに1日追加、さらに以後1年ごとに2日追加で、勤めはじめて8年6か月すれば20日に達し、それ以降は毎年20日が付与されることになっています。パート・アルバイトの場合は、これよりずっとややこしくなっています。週30時間未満でも所定労働日数が週5日、または年間217日以上の場合は、30時間以上と同一です。しかし、それ以外の短時間労働者は、週の所定労働日数が4日から1日まで4つに区分され、年の所定労働日数にもまた4つの区分があって、さらにそれぞれ0.5年から6.5年まで7つの異なる継続勤務期間によって、年休の付与日数が区分されています。参考までにリンクした大阪労働局富山労働局のパズルのような図表をご覧ください。

これではあまりに複雑です。所定労働日数が週1日または年48日から72日までの労働者は、6か月の継続勤務で初年度は1日、4年6か月で3日の有給を取ることができます。上記の労働局の図表を見て、これがすぐに理解できる人は、数独のような数字パズルにとても強い人です。年休を普及するには、こうしたわずらわしい制度をもっとシンプルにする必要があります。私見を言えば。1か月以上同一雇用主のもとに継続勤務していれば、最初の年でも1か月当たり2日、年間では12倍の24日を有給の休みにする、その後1年に1日ずつ増やし、6年以降は国際水準の年30日を付与するという制度に改善するべきです。

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