第334回 書評 『劣化する雇用 ビジネス化する労働市場政策』旬報社

『劣化する雇用 ビジネス化する労働市場政策』旬報社、1,600円

伍賀一道ほか編著 執筆者=脇田 滋、森 巌、後藤道夫ほか

「しんぶん赤旗」 2016年8月7日

この本は雇用問題の専門家と、厚労省の本庁や労基署や職安で働く職員で組織された労働組合の活動家によって書かれた。そのために近年の労働市場の急激な変貌が手に取るように描かれている。

「劣化」という言葉は「低下」と「悪化」を合わせた意味を持つ。タイトルには、労働市場が人材ビジネスの草刈り場になり、労働基準の底が抜けるほど雇用の質が低下し、労働者階級の状態が悪化したという認識が示されている。

第?章は、パート、アルバイト、派遣、その他の非正規労働者が全労働者の約四割、女性では約六割を占めるまで増えた背景を、「雇用維持」から「労働移動」に舵を切り替えた「労働市場政策」に焦点を合わせて考察している。

第?章は、雇用形態の多様化と労働市場の流動化につれて、人材ビジネス業が繁盛し、労働移動支援の助成金を食い物にした「リストラ指南」まで現れ、求人・求職情報の人材ビジネスへのオンライン提供や、職業紹介業務のオンライン化が進んでいることを明らかにしている。

第?章は、安倍内閣のいう「失業なき労働移動」の実像を抉り、労働者派遣法の再三の改定による派遣利用の拡大・固定化と、ジョブ・カード」「キャリア・コンサルタント」などの職業能力評価の新手の手法を暴いている。

最後の第?章は、良質な雇用を創出するための労働市場政策のあり方を説いている。

読み終わり、新自由主義的規制緩和で雇用も雇用政策も劣化して、使用者には働かせやすいが、労働者には働きづらい世の中になったものだと痛感した。この現状を変えるためにもぜひ一読されたい。(1年遅れの転載ですみません)

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