4月27、8日の各紙は、学校法人関西大学(以下、法人または関大)が時間外労働をめぐる労働基準法違反で労働基準監督署に実態を申告した高槻ミューズキャンパス付属校中等部のK教諭を解雇した事件を一斉に報じています。
労基法は第104条で、事業場にこの法律に違反する事実がある場合、労働者は、その事実を労基署に申告(告発)することができる。使用者は、申告をしたことを理由として、「労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない」と定めています。関大当局は、就業規則にある「その職に必要な適格性を欠くと認められるとき」という規定を解雇の理由にしていますが、何がこれに該当するのかは示していません。解雇された教諭も支援する組合も、何の根拠もない暴挙だと断言しています。そうである以上、今回の法人の処分は、労基法違反申告者に対する報復と弾圧を意図したあきれた不当解雇であると言わなければなりません。これは労基法が禁止する、申告したことを理由とする「解雇」にあたります。
また労基法によれば、使用者は労働者に1日8時間、1週間40時間を超えて労働させてはなりません。この法定労働時間を超えて時間外労働をさせる場合は、使用者は同法の36条にもとづいて、従業員の過半数を代表する労働組合またはそれに代わる者とのあいだで36協定と呼ばれる時間外・休日労働協定を結び、労基署に届け出る必要があります。
ところが、今年4月3日の「毎日新聞」によれば、関大は開校8年目の付属小中高校の教員について、36協定を結ばずに時間外労働をさせ、茨木労基署から昨年4月と今年3月に2度の是正勧告を受けていました。36協定を結ばずに時間外労働をさせることや、労働時間を把握せず賃金台帳に記載しないことは、疑う余地のない労基法違反です。そのうえ、時間外労働に対する賃金(残業代)の支払も行われていませんでした。違法な未払金額は2016 年度だけで9800 万円、時効が来ていない2015年度も含めると約2億円に上ります。にもかかわらず、法人は未払残業代として総額約3400万円の支払だけですませようとしています。
ちなみに、昨年4月以降に法人が教員61人の残業時間をパソコンの使用時間を基に調査したところ、52人が法定の8時間を超えていました。最長で年間2042時間に達し、国が定める過労死ライン(月80時間以上の時間外労働)を大幅に超えていた教員もいました。
このような明白な労基法違反を是認することができずに、労基署に申告した労働者が今回解雇されたK教諭でした。教諭は団体交渉で理事長に対して労基法を守るように強く求めましたが、受け入れられなかったために、やむを得ず申告に及んだものです。
私は、「大阪過労死問題連絡会」と「NPO法人働き方ASU-NET」の一員として、雇用・労働問題、とりわけ長時間労働と過労死問題に関心をもってきました。4年前に退職するまでは関西大学に勤めていました。今回の事件は、私が住む高槻市にある学舎で起きたという事情もあります。昨年は同学舎の高等部の生徒を対象に、厚生労働省が過労死防止の一環として取り組むワークルールの啓発授業も行いました。そこでは残業代を支払わない会社は「ブラック企業」と呼ばれてもいたしかたないという話もしました。
こうした諸々の関わりからも、今回の関大の暴挙は見過ごすことはできません。ASU-NETでは、近くK教諭の解雇撤回闘争を支援し、合わせて全国の職場に蔓延する違法残業申告者に対する不利益取扱を告発する集会を開き、まともな働き方を実現するたたかいを広げていきたいと考えています。
最後に参考までに27日に高槻ミューズキャンパス正門前で配布された「関西大学初等部・中等部・高等部教員組合」のビラを貼り付けておきます(名前はイニシャルにしています)。