規制緩和案:労使合意で大半適用 際限ない労働時間に不安

毎日新聞 2014年04月22日

 産業競争力会議の民間議員が22日に示した、賃金を労働時間ではなく成果に応じたものへと変える案は「残業には報酬を支払う」という労働時間規制の根幹を揺るがす提案だ。2007年に第1次安倍政権が断念した同様の規制緩和案は、高収入の会社員を対象としていた。それが今回の案は、労使の合意があればほぼすべての労働者に適用されるとあって、与党からも「成果を出すために際限なく働かざるを得なくなる」との懸念の声が上がる。

 労働時間の規制緩和について民間議員は2案を示し、両方の導入を求めている。一つは「高収入・ハイパフォーマー型」案。年収1000万円程度以上の会社員が対象で、賃金は労働時間の長さに関係なく仕事の成果にのみ左右される。「残業代ゼロ法案」と批判され、政府が07年に法案化を断念した「ホワイトカラー・エグゼンプション(除外)」とほぼ同じ内容だ。

 今回はこれに「労働時間上限要件型」案を加えた。こちらは年収要件がなく、「個人の能力や裁量で労働時間を管理できない者以外」で「国が示す範囲」の社員が対象。本人の同意と労使の合意があれば、大半の従業員が「目標達成度に応じた報酬」となる。過労を防ぐため、国が年間労働時間の上限基準を示し、職務も労使で決めるとしているが、厚生労働省は「使用者が強い日本の労使の力関係の下では、なしくずしになる」(幹部)と反発している。

 産業競争力会議側は、同上限要件型について「柔軟な労働時間を望む子育てや介護をしている女性らが対象」と説明する。しかし、公明党幹部は「企業は『問題児』の社員に成果を求め、達成できなければクビを切るという使い方をする」と不信感をあらわにする。「全国過労死を考える家族の会」(寺西笑子代表)は「際限のない長時間労働を助長し、過労死・過労自死の犠牲者を増やす」と批判している。

 安倍政権が医療分野に加え、労働分野でも大幅な規制緩和を打ち出そうとしている背景には、6月に決定する予定の成長戦略の改定版に目玉政策が乏しいことがある。厚労省は民間議員案への対案として、1日の労働時間を柔軟にできる従来の「フレックスタイム」を拡充する案を検討する。6月の「山場」に向け、落としどころを巡る政府内の攻防が続きそうだ。【中島和哉、東海林智】

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