米首都ワシントンには約50万人が集まり、抗議の行進をおこなった
【ワシントン=河内真帆】トランプ米大統領が就任した翌日の21日、女性を中心とする抗議デモが世界各地に広がった。米国の首都ワシントンでは想定の2倍の約50万人が参加し、全米のデモ参加者は100万人を超えたもよう。ロンドンやパリなどでもデモが行われ、参加者は女性に差別的な発言を繰り返してきたトランプ氏に抗議の声を上げた。
米国ではワシントンに加え、東海岸のニューヨークやボストン、中西部のシカゴ、西海岸のサンフランシスコ、ロサンゼルスなどでも実施された。米国外ではロンドン、パリに加え、シドニーやオタワでも開かれたという。ロイター通信によると、全世界の参加者は250万人超になったもようだという。
ワシントンでは集会場所の仮設ステージに女優のスカーレット・ジョハンセンさん、女性運動家のグロリア・スタイナムさん、映画監督のマイケル・ムーアさんらが次々と登壇。「わたしたちが選んだ大統領ではない」「この政権の誕生に負けてはいけない」と檄(げき)をとばした。
歌手のマドンナさんはトランプ氏を放送禁止用語を使って攻撃した後、「エクスプレス・ユアセルフ」などヒット曲を披露するなどして会場を沸かせた。サンフランシスコ市で座禅道場を主宰するリンダ・カッツさん(69)は「1960年代の反戦デモにも参加したことがあるが、今日のデモは女性たちの心意気が連帯した特別な集会」と目をうるませた。
女性たちの行進と銘打っているが、男性の参加者も目立った。ニューヨーク市から参加した造園設計士のケビン・ドノバン・ボーゲルさん(33)は「女性の権利は100%守られるべきだし、それは男性の責任でもある。
耳付きニット帽をかぶってデモに参加する女性ら
トランプ氏は他人への思いやりを示してもらいたい」と語った。
参加者のメッセージもトランプ氏への非難だけでなく、環境問題、賃金格差、移民問題、人種差別まで多岐にわたった。メッセージの深刻さとは対照的に、参加者の多くがトランプ氏の女性に対するわいせつな発言を逆手にとり、手編みのピンク色の「小猫ちゃん」の耳付きニット帽をかぶって参加するなど、ユーモア感のあるなごやかな雰囲気に終始した。
「昨日は1日中家にひきこもり、テレビも見なかった。今日は障害者グループの代表として権利と自由を代弁するわ」と地元在住のマーガレット・グロスさん(62歳)は言う。
女性による大統領に対する抗議デモは、米国では1913年に投票権を求めて5000人の女性が第28代ウッドロー・ウィルソン大統領就任式の前日に行進したのが最初とされる。
昨年11月の大統領選挙が終了した数日後にこの行進が発表されると、投票結果を嘆いていた女性の気持ちを集める窓口となったようだ。フェイスブックにイベントページができ、みるみるうちに口コミで参加希望人数が増えた。同イベントに連帯を示すグループも増え、全世界30カ国以上、600カ所以上で同日開催するという前代未聞の抗議活動に発展した。
ホワイトハウスの前にたどりついた参加者は「わたしたちはここから去らないわよ!」とホワイトハウスに向けてシュプレヒコールを大合唱。就任初日からすでに全世界の多くの女性たちに「反対票」を投じられたトランプ大統領はなんと反論するのだろうか。