毎日新聞 2013年10月04日
◇人気支えた女性たち離反 周辺首長ら「維新包囲網」 ぐらつく地方議員
わずか1年前には「首相にふさわしい人」のトップを競っていた橋下徹・日本維新の会共同代表(大阪市長)が正念場を迎えている。参院選での不振に続く堺市長選完敗で「常勝神話」は崩壊した。橋下氏は終わったのか−−。それを知るには大阪の街を歩いてみるしかない。
橋下人気を支えてきた原動力の一つが、いわゆる「大阪のおばちゃん」だ。政界進出のきっかけとなった2008年の大阪府知事選ではペンライトを持った追っかけおばちゃんたちが街頭演説をハシゴしていたほどだった。ところが今、彼女たちの間で「橋下離れ」が顕著になっている。
「従軍慰安婦発言、世界中から批判されたんやろ? 勉強もせずに余計なこと言わんといてほしい。恥さらしや。本当なら池上(彰)さんみたいな、ちゃーんとした人に市長になってほしいわあ」
JR大阪駅に近い梅田の繁華街。友人の女性と買い物に来たという66歳の女性は一気にまくし立て、記者に「ほな頑張ってな」とあめ玉を2個握らせて歩き去った。
堺市長選投開票日の翌9月30日から10月2日にかけ、大阪のど真ん中というべきこの場所に立ち、府内に住む中高年女性30人に「橋下さんを支持する・しない」とその理由を尋ねた。その結果、半数近い14人が不支持と回答。支持は10人で、残りは「どちらとも言えない」だった。特徴的なのは、不支持や「どちらとも……」の人たちのほとんどが「以前は応援していた」と語る転向組なことだ。
「やり方が強引」「発言が過激、不適切」との声が多く、実行力や歯切れの良さといった橋下氏のウリが今やマイナス評価を受けていることも分かった。特に従軍慰安婦発言については支持、不支持を問わず根強い反発があることを肌で感じた。
おしゃべり好きで発信力の強いおばちゃんたちの離反。橋下氏には痛手だろう。
大阪、堺の両市を大阪府に統合し特別区に再編する「大阪都構想」。その是非を争った堺市長選の戦い方への不満もくすぶり続けている。
今回、維新は市中心部のビジネスホテルをほぼ借り切り50人以上の国会議員秘書団を送り込んだ。橋下氏自身、ほぼ毎日、堺市入りしスーパーマーケットや団地の前で演説を繰り返した。「地上戦を仕掛けた」(維新関係者)といえば聞こえはいいが、要するに「ドブ板選挙」だ。