朝日DIGITAL 2017年9月22日
http://digital.asahi.com/articles/ASK9Q44YKK9QUTIL017.html
写真・図版(省略)
電通の違法残業事件で初公判が開かれた東京簡裁の法廷=代表撮影
労働基準法違反の罪に問われた広告大手・電通(東京)の山本敏博社長(59)は22日、法人の代表として東京簡裁に出廷。最終意見陳述で違法残業事件について謝罪した。全文は次の通り。
◇
当社が労働基準法に違反し、公判で審理されていることについて、私は社長として重大な責任を感じております。以前にも労務問題があり、また労働時間に関する是正勧告を複数回受けていたにもかかわらず、根本的な解決を図ることができず、このような事態を引き起こしてしまったことを深く反省し、心よりおわび申し上げます。
特に高橋まつりさんの尊い命を失うに至ったことの責任は重大であり、ご本人、ご遺族の方々にあらためておわび申し上げます。また、社会の一員として、企業のあるべき責任を果たせなかったことにより、多大なご迷惑をおかけしたことにつきましてもおわびいたします。
私は、当社におけるこれまでの最大の誤りは、「仕事に時間をかけることがサービス品質の向上につながる」という思い込みを前提にしたまま、業務時間の管理に取り組んでいたことにあると考えております。「業務時間とサービス品質」の関係を短期的視点でとらえてしまい、そのことにより労務管理が表層的なものにとどまったため、有効に機能しないという結果を招いてしまいました。
この反省に立ち、「業務時間を適切にコントロールし、社員全員の心身の健康を維持することこそが、持続的な品質の向上、企業価値の向上につながる」という考えに改め、その考えに立って改善・改革を実行していくことが、二度と労務問題を起こさない絶対条件であると認識するに至りました。
また、社員一人一人を複眼的かつ継続的に見守る仕組みがなかったことも大きな反省点です。このことに対しては、社員を個人単位で入社から退社まで、健康管理と業務キャリアの両面で継続的に見守る仕組みを構築する必要があると考えています。
以上のことを踏まえ、仕事のやり方に関する問題点を根本から見直す「労働環境改革基本計画」を、役員と社員の継続的な対話と議論、また独立監督委員会との意見交換などを踏まえて策定いたしました。計画の内容は多岐にわたっており、施策を順次実行しております。今後、全役員と全社員が一丸となって計画を完遂する所存です。
当社は、この計画の遂行により、法令順守の徹底、過重労働の撲滅、労働環境の改善を実現させることはもちろんのこと、全ての社員の心身の健康を経営の根幹に置き、一人一人の社員が生き生きと生活し、仕事をし、自らの成長と会社の成長を共に実感できる企業になることを目指しており、そのための基盤となる改革を2018年末までに確実に成し遂げます。
その結果、「働き方も働きぶりも、皆様に信頼される会社」にすることが、私の社長としての責務と考えており、このことは全役員の決意と覚悟であります。