今春の大学卒業者で就職した約35万7000人のうち、非正規雇用が約2万2000人だったと今年度の学校基本調査でわかった。
初の分類だ。この数字を、進学も就職もせず、あるいはアルバイトなど一時的な仕事に就いた例と合わせると、卒業者の22.9%が「安定的な雇用に就いていない」ことになる。そう文部科学省は説明する。
さまざまな角度から検証されなければならないが、一つは大学教育と就職の「接続不備」の問題がある。
近年、自立した職業人になる意識や基本的能力、関心を養うキャリア教育が重視され、各大学の就職支援体制も学外PRの重点項目だ。中央教育審議会も昨年、幼児期から生涯学習にわたるキャリア形成の体系的教育が必要と答申している。
しかし、現実に指導といっても、エントリーシートの書き方のよ うなものから、OBを招いた実学的な講習など、教育内容や支援の手法は幅広い。大学や地域の事情にも差異はある。また過密な就職活動も、体系的教育の阻害要因になろう。
だが、接続の問題は、実は大学進学の時点にも表れている。
キャリア教育の原点には「なぜこの大学、この学部を選んで入ったか」という問いがあるはずだ。
しかし、進学志望者総数が大学の総定員枠に収まってしまうような「全入時代」到来で、今や定員割れも珍しくなく、入試の形骸化や学力不問傾向も見られるようになった。
高校程度の補習をする大学も少なくない。そうした実情から、一定の学力を担保し、高校と大学教育を円滑に接続させるための「高大接続テスト」などが論議されている。
この問題は、大学から就職への接続問題と同一線上にある。学生の学識や能力と就職の接続が円滑にできる方法はないものか。難問だが、経済界側の採用方法にも、大いに改善の余地があるのではないか。
来春卒業予定者から就職活動解禁日は2カ月遅く、3年生の12月1日になった。しかし、経済界の意見は割れ、採用選考開始は4月1日のままだ。また、こうした新卒一括採用だけではなく、適宜の通年採用を求める声もあるが、今のところ熟議する機運はない。
大学は出たけれど、ではないが、大学進学率が5割を超す今、大学を出たというだけで一定の職業が待ち受けるはずはなく、また採用側も、大学を出たのならという前提で判断する時代ではとっくにない。
そうした認識に立ち、大学、企業も状況改善に密接に協力すべきだ。
もちろん大学生に限らず、若者全体の安定的就職と能力を十分に発揮する活躍は、超少子高齢社会が進む中でますます重みを持つ。