http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130723-00000033-mai-bus_all
毎日新聞 7月23日
今年度の経済財政白書は、足元の景気の持ち直しを金融緩和や財政出動の成果と位置づけ、アベノミクスを自賛する内容となった。ただ、賃金や雇用環境の改善はまだ限定的。短期的には、物価や長期金利の上昇による家計の負担増が先行する懸念もあるが、こうした「アベノミクスの影」の分析は十分とはいえない。
白書は、今年1月以降、モノやサービスの平均的な購入価格が上昇に転じたとして、「家計の低価格志向は緩和しつつある」と分析。景気の先行きへの見方が改善して家計のヒモが緩くなったことに、デフレ脱却の兆しを見て取った。
一方で、足元では円安や原油高などを背景に、食料品などの出荷価格が引き上げられ、ガソリン価格も上昇。日銀の異次元緩和は長期金利の上昇をもたらし、住宅ローンの負担も重くなる。日用品の値上げが小売価格に波及し、消費税まで増税されると、子育て世代など中間層の負担が重くなりかねない。
白書は「企業収益の改善が賃金に波及する兆しが一部にみられる」と楽観的だが、企業は新興国などとの競争にさらされ、ベースアップなど賃金底上げの動きは限定的だ。従業員5人以上の企業の給与は、安倍政権発足前の昨年11月の27万8900円から、今年5月には27万1600円とむしろ下がった。政府は、雇用・賃金の改善や、企業の国際競争力向上に向けたシナリオを早期に描く必要がある。【丸山進】