福井新聞論説 最低賃金 格差解消が新たな格差に

福井新聞 2012.9.7

 2012年度の地域別最低賃金が、各都道府県の地方審議会の答申を受け出そろった。

 福井県は現行の時給684円から6円引き上げ690円に改正される。全国的にみれば上から26位と中位にあるが、最も高い東京の850円とは160円もの差がある。最低額の島根、高知の652円と東京との差は200円弱。地域格差は今後も拡大する見通しで、地方の労働者の働く意欲をそぎかねない。

 02年度は福井県が642円、東京は708円で差は66円。それが10年間で100円近く開いた。特に07年度から12年度の間、福井県の31円上昇に対して、東京は111円の伸びを示した。これは08年の改正最低賃金法施行で、最低賃金と生活保護の整合性に配慮することが盛り込まれたことが大きく影響している。

 東京など大都市部では生活保護の受給者が急増。とりわけ首都圏では受給者が家賃の高い民間賃貸住宅に入らざるを得なくなっており、住宅扶助が膨らんでいる。このため支給水準は上がる一方で、最低賃金を押し上げる要因になっている。企業側の悲鳴も聞こえてきそうだが、東京の850円はそれでも生活保護を7円下回る。「逆転」現象は東京を含め6都道府県で解消されないままだ。

 生活保護受給者は全国で210万人を超え過去最高を更新している。非正規労働者の割合は35%超に上り、非正規の男性58%、女性85%の平均年収が200万円以下のワーキングプア。病気などにかかれば生活保護に頼らざるを得ず、大都市を中心に受給者は
今後も増加の一途とされる。生活保護と最低賃金との整合性自体に疑問を呈する専門家もいるが、このままでは地域格差が確実に広がりそうだ。

 国などは生活保護の見直し、削減を打ち出しているが、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する以上、引き下げには批判も出よう。一方で住宅の現物支給や自立支援策の充実なども検討されているが、ケースワーカーなど現場や自治体の負担増は計り知れない。

 地方の最低賃金のさらなる引き上げはどうか。福井県の地方審議会では経営者団体による使用者側が、中央審議会の引き上げ目安4円でさえ困難とする意見も出たという。デフレ、超円高など厳しい経済情勢の下、地場企業の台所事情も苦しい。

 県内では最低賃金の対象は非正規労働者の一部とされるが、若手の賃金相場などに波及するとの見方もある。企業が人件費の固定化や削減に傾く中で、非正規や若手の賃金を上げれば、中高年層の引き下げといった影響も懸念される。

 10年には政労使代表の「雇用戦略対話」が最低賃金に関し「できる限り早期に全国最低800円、全国平均1000円を目指す」で合意したが、現状では空論の域を出ない。雇用環境の改善はむろん、日本経済の底上げには成長戦略を着実に、早期に推進する以外にないだろう。

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