社説[働き方改革これから]中小企業への配慮忘れずに
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200106-00518485-okinawat-oki
2020/1/6(月) 7:50配信 沖縄タイムス
新しい年の始まりが、いつもよりのんびりしたように映ったのは、働き方改革の影響もあってのことだろうか。
元日は休んで、2日初売りというのが、ここ数年の小売業界の動きである。この正月は、大手コンビニでも一部店舗が元日休業に踏み切るなど大きな変化があった。
人手不足を背景に、長時間労働の改善を優先し、休暇を取りやすくしようとの試みである。
「働き方改革関連法」施行2年目となる今年は、時間外労働の上限規制が中小企業にも広がる。
青天井だった残業時間の上限を原則「月45時間、年360時間」とするもので、繁忙期など特別な事情が認められる場合でも月100時間を超えると罰則が科せられる。
昨年4月、大企業で始まり、今年4月からは中小でも働き方改革は待ったなしとなる。
残業が減り、休みが取りやすくなり、職場環境が改善され、仕事と子育ての両立などワークライフバランスが向上する方向に進むのなら問題はない。
ただ懸念されるのは、「取引先の大企業が残業を減らすため、下請けの納期が厳しくなった」「取引先の時短対応のため丸投げが増えた」といった声である。下請けの中小企業が受注先である大企業の要請を断ることは難しいからだ。
大企業の理解も重要だが、「しわ寄せ」が及ばないよう行政も監視の目を光らせてほしい。
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すでに関連法が施行された大企業で、働き方はどう変わったのか。
リクルートスタッフィングが昨年7月に実施したインターネット調査によると、中間管理職の1割以上が「残業が増えた」、約6割が「残業時間は変わらない」と回答している。残業理由で「管理業務」の次に多かったのが「部下のサポート」だった。
部下に残業をさせないよう、仕事の一部を管理職が肩代わりしている姿が浮かび上がる。
大企業でも四苦八苦する状況で、より人手不足が深刻な中小企業の労働者は先行きに大きな不安を抱えている。
そもそも労働者に残業をさせる場合、労使が合意の上で「三六(サブロク)協定」を結ぶ必要があるが、連合の調べで締結率は6割に届いていない。
働き方改革に取り組む前提として協定の締結が不可欠である。
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残業規制を後押ししたのは、過労死根絶を求める世論の高まりだった。
特例とはいえ月100時間近い残業は、過労死ラインぎりぎりまで働かせることにお墨付きを与えるもので、問題なしとしない。
年末年始の休業に踏み切った業界は、短期的に売り上げは減っても、従業員の定着とサービス向上に結び付くとの発想に立っている。
業務や組織の見直しはもちろん、テレワークなどITを活用した効率的な働き方によって、改革を生産性向上につなげるべきだ。