韓国の判決:正当な事由のない派遣労働者の交代要求は「派遣契約の解除」(2/17)

韓国の判決:正当な事由のない派遣労働者の交代要求は「派遣契約の解除」
http://www.hani.co.kr/arti/society/labor/928477.html#csidx8ae09d66e6981ba9d17fc14144381ed

(W) 韓国で派遣労働をめぐって注目すべき判決がでました。これを報道するハンギョレ新聞を試訳してみました(試訳文責:脇田滋)


正当な事由のない派遣労働者の交代要求は「派遣契約の解除」

 ハンギョレ新聞 登録:2020-02-17 05:00

 裁判所、恣意的契約解除の責任を問う
派遣先事業主「賃金支給連帯責任」

〔画像〕KB証券のホームページ画面
http://flexible.img.hani.co.kr/flexible/normal/700/253/imgdb/original/2020/0216/20200216502133.jpg

 派遣先事業主の派遣労働者の交替要請は、派遣契約の解除に当たるので、不当解雇による賃金支払いの責任は派遣先事業主と派遣元事業者が共に負うべきだという判決が出た。派遣労働者の不当解雇の責に帰すべき理由が派遣先事業主にあるとみて連帯責任を問うた異例の判断である。

 ソウル中央地裁(民事207単独、李ジュング判事)は、派遣会社T社所属で、ケービー(KB)証券の役員運転手として働いていたチョン某(46)さんが両社を相手に起こした賃金請求訴訟で「(派遣先事業主である)ケイビー証券が正当な事由なく原告(チョンさん)の交代を要請したのは、T社との派遣契約を正当な事由なく解約したこと」として両社が連帯し、チョンさんに賃金と退職金など3千万ウォン余を支給するように、この11日判決した。

 チョンさんが出した訴状と裁判所の判決文を見ると、チョンさんは、昨年1月24日、T社との1年ごとの労働契約を結んでケイビー証券に派遣され、同社の役員運転手として働いた。2ヵ月後の3月22日ケイビー証券は、T社にチョンさんの交代を要請し、T社は「勤務、不適格者と判断」してチョンさんには労働契約の解約通報書を送った。ケイビー証券が特別な理由もなくチョンさんの交代を要求したことを受け、同社(T社)は「勤務不適格」を理由にチョンさんを解雇したのである。

 これに対して裁判所は、「T社が送った契約解約通報書に具体的な解雇事由が記載されていない不当解雇として、解雇は無効」だとし、チョンさんの残り契約期間10ヵ月分の賃金と年次休暇手当、退職金を含めて計3千万ウォン(≒日本円300万円)余を支給するよう判決した。「勤務不適格」が具体的に何を意味するのか分からず、解雇理由にはならないということである。また、裁判所は「KB証券の交代要請書には交替事由が全く記載されていない。正当な理由なく交代を要請したのは、派遣契約を解約したもので、KB証券は「T社と連帯して賃金および退職金を支払う責任がある」とクギを刺した。

 今回の判決は、派遣労働者の交代を要求した派遣先事業主に不当解雇の帰責事由があると認めたという点で注目に値するという評価が出ている。労働法専門の金珍(キム・ジン)弁護士は「派遣勤労者保護法上の派遣先事業主の賃金連帯責任(34条2項)、同法施行令の不当な派遣契約解除(5条1項)などの条項を幅広く適用した意味ある判決」とし、「派遣先事業主の恣意的な交代の要求で解雇される派遣労働者がかなり多いが、今回の判決でこのような不当解雇が減少するものと期待する」と話した。

 チョ・ヘジョン記者zesty@hani.co.kr
原文参照: http://www.hani.co.kr/arti/society/labor/928477.html#csidx8ae09d66e6981ba9d17fc14144381ed

 

 

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