〈働く現場から〉/「副業さん」の話も聞いた/ジャーナリスト 東海林智 (2/28)

〈働く現場から〉/「副業さん」の話も聞いた/ジャーナリスト 東海林智
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連合通信 2020年2月28日

 料理宅配サービスのウーバーイーツで働く男性(25)。スポーツタイプの自転車に乗る彼は、シェア自転車の赤く小さな電動自転車を使って配達する人たちを「副業さん」と呼んだ。ウーバーイーツの仕事一本で食べている自分への自負もあるのだろう。もっとも、その「副業さん」については、名前も知らないし、言葉を交わしたこともないという。街角ですれ違う「競合相手」だ。

●収入は月1〜3万円

 そんな「副業さん」に話を聞いてみたいと思い、東京・新宿区高田馬場で、土曜日の街角に立った。正午前から始めて夕方近くにようやく話をしてくれる人をキャッチできた。声をかけたら一瞬困惑した顔をした。「ビールでも飲みながら」と誘うと、こわばった顔が少し和らいだ。

「じゃ自転車を返してくるんで」。そういうと、赤い自転車を近くのサイクルポートに返し、スマホで利用料金を決済した。29歳でIT関連企業の正社員。ウーバーの仕事は、副業として昨年の夏から始めたという。この副業で得る収入は月1〜3万円だ。「収入の差はやる気の違い」と笑い、続けた。「やる、やらないも含めて、自分の判断でできるのが良い」

 働き方改革で、正社員の副業が緩やかになったのを感じてやってみた。「会社の就業規則で副業が認められているかどうかは知らない」という。「ウーバーのような形(個人請負)なら、例えば、コンビニでアルバイトをするような副業とは違って、会社に対して罪悪感ないし、副業をやる方にしてもガッツリ縛られていないので気が楽だ」というのが、その理由だ。スポーティーな格好でビールをおいしそうに飲み干す彼を見ていると、趣味のスポーツで楽しんだ後のようにも見える。

●生活するにはリスキー

 彼自身、この働き方が気に入っているのかもしれない。そこで、「この仕事で生活したいとは思わない?」と聞いてみた。彼は、半笑いで答えた。「あくまで、金を得やすい副業だからいい。この仕事で生活するのは、まだ、あまりにもリスキーでしょう。よほど何か特別な技能でも持っていたら話は別でしょうが、ウーバーのような仕事をメインに据えて生活できるほど甘くはないと思う」

「なるほど」とうなずいた。「収入の差はやる気の違い」との言葉は、もう一つ、確固とした収入源があっての話なのだ。そう考えると月1〜3万円というのは絶妙な額だ。ちょっとお小遣いが足りない時の補てん、旅行などしっかり遊びたい時の資金……。ちょっとしたお金を稼ぐのにちょうどいいのかも知れない。

●中高年者も結構多い

 街頭に立って副業派を探している時、ウーバーで働く人たちは、必ずしも若者ばかりではないのだとあらためて気付いた。40代はもちろん、私(55歳)ぐらいの人も、結構見かけた。中高年者であればなおさら、本格的な「副業派」のように思えた。

 今回、話を聞いた男性が、こうしたギグワークをあくまで「副業」と考えるようになったきっかけは、くしくも冒頭に登場した「専業派」の若者(25)と一緒だった。それは、ウーバーの一方的な報酬引き下げの通告だったという。「自分の自由は、ウーバーの自由に過ぎないんだ」。そんな思いが〃新しい働き方〃の魅力を一気に冷めさせた。(この項続く)
 

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