「デンカ」研究員の過労自殺、労基署の不支給判断を審査官が逆転し、労災認定 (4/6)

「デンカ」研究員の過労自殺、労基署の不支給判断を審査官が逆転し、労災認定

 大手の化学メーカー「デンカ株式会社」に研究員として勤務していた男性(当時28歳)の自殺が2020年3月31日付で、労災として認定されました。4月6日、群馬県庁で男性の両親が記者会見し、その内容が、新聞、テレビなどで報道されました。

 NHK News 「労基署の処分覆し労災認める決定」(4/6)
 上毛新聞 「長時間労働で自殺 逆転で労災認定 伊勢崎の工場勤務男性 保険審査官が労基署判断取り消し」(4/7)
 また、shogoさんのコラムの「新型コロナウイルス関連で注目のデンカはどのような会社でどのような過労死事件を起こしたのか(考察)」(2020年4月8日) が詳しい情報を記載しています。

 これらの情報によれば、事件の経過は、次の通りです。

◆経緯
 山形大学の大学院理工学研究科博士前期課程を修了
 12年 4月 電気化学工業・伊勢崎工場の高分子加工研究部に研究員として配属
 13年 4月ごろ~
       人員削減により業務が増え、
       恒常的に月100時間以上の時間外労働続く
       仕事でミスを繰り返すようになった
       男性のインターネット検索歴
        「睡眠時間 3時間」「仕事 殴られる」「自殺したい」など
 14年 4月 医師の診断書→「抑うつ状態だった」
 16年 5月 寮で首をつって自殺
 17年12月 前橋労基署に労災認定を申し立て→不支給決定
        「精神障害が業務上の事由によるものとは認められない」
 19年 3月 遺族、これを不服として審査官に審査請求
◆審査官決定書の内容
 恒常的な長い時間外労働(月100時間程度)を認め、心理的負荷は大きかったと指摘。「業務上の事由による精神障害が徐々に重症化し、自殺に至った」とし、長時間労働による精神障害と自殺に因果関係があると結論付けた。(上毛新聞4/7)
 精神障害の発病による自殺は業務上の事由によるものと認められるとして労働基準監督署の処分を取り消し労災として認める決定を出しました。(NHK4/6)
 群馬労働局は、仕事内容の大きな変化や長時間労働による心理的負荷は強かったとし、「自殺は業務上の事由によるもの」と認定(朝日新聞4/7)

◆遺族の話
 父親(69)=岩手県釜石市=は「息子は明朗活発で未来があった。会社に人としての思いやりがあれば死ななくても良かったはずだ」と言葉を詰まらせながら訴え、「なぜ長時間の残業がなされたのか。真実を明らかにするとともに、会社の責任者に謝罪してほしい」として会社側に損害賠償を求め民事提訴する方針を示した。(上毛新聞4/7)
 「息子の命は帰らないが、過労死の防波堤のかさ上げになることを望む」と強調。会社を相手に損害賠償請求訴訟を起こす方針を示した。(共同通信4/6)
 「会社の責任者には息子の墓前に手を合わせて謝罪してもらいたい」
◆会社の話
 同社は「亡くなった方のご冥福を心よりお祈り申し上げるとともに、当局の判断を誠実に受け止め再発の防止に努めます」とコメント。(上毛新聞4/7)
 「当局の判断を誠実に受け止め、再発防止に努める」(共同通信4/6)
 「亡くなった社員へのご冥福を心からお祈りするとともに、今回の決定を誠実に受け止めコンプライアンス教育の徹底など再発防止に努めていきます」とコメント(NHK4/6)
◆前橋労基署の話
 「審査官の判断を尊重し、決定を見直したい」(上毛新聞4/7)

※なお、(デンカ株式会社)は、「電気化学工業」(旧名)で知られ、2015年現在の「デンカ」(英語:Denka)に名前を変えた大企業です。新潟県・糸魚川の青海工場をはじめ、大牟田、千葉、渋川、大船、伊勢崎の6工場を有し、2014年1月、サッカーJ1のアルビレックス新潟の本拠地「ビッグスワン」の命名権を得て、新名称「デンカビッグスワンスタジアム」となったことで知られています。

現在は、型コロナ感染症で話題となっている「アビガン」の原料となるマロン酸ジエチルを生産すると発表したことで注目を浴びています(会社HP参照。朝日新聞2020年4月4日)。また、2019年3月現在、資本金は、約370億円、従業員は3250名、平均年齢40.6歳、平均勤続年数17.1年、平均給与(年額)706万8520円、労働組合は「無所属」ということです(日経会社プロフィルより)。

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