慣れない長期在宅勤務で大混乱…テレワークの不幸と幸せ (3/21)

慣れない長期在宅勤務で大混乱…テレワークの不幸と幸せ
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2020/03/21(土) 9:26配信 日刊ゲンダイDIGITAL

慣れない長期在宅勤務で大混乱…テレワークの不幸と幸せ
自己管理が難しい…(C)PIXTA

 コロナウイルス禍で学校は休校、大企業はテレワークと大混乱。街行く人々は半減し、通勤電車も普段よりすいている。感染拡大が収まり、一日も早い終息を願うばかりだ。在宅勤務でサラリーマンが羽を伸ばせるかというと、そうでもない。慣れない環境での仕事に苦労している人は少なくない。外出できない企業などはストレスもたまるだろう。運動不足で体重が増える社員も多いかもしれない。テレワークは今月いっぱい続きそうで、さまざまな声が上がり始めている――。

■残業代が減り3月は金欠のサラリーマンが続出

「テレワークのせいで外回りの“営業手当”は全額カット。残業代もほぼゼロで、給料は5万〜7万円は少ないはず。来月の生活費が心配です」

 タメ息交じりにボヤくのは、飲料系の営業マンS君(30)。賃貸のワンルームマンションに一人暮らしで、2月下旬からテレワーク中。「今月は食費も光熱費も普段よりかかって出費が多いはず」と、肩を落とす。

 人事制度に詳しいジャーナリストの溝上憲文氏の試算によると、「30歳のSさんの残業時間が1カ月30時間だとします。この年齢の時間給は2500円。ですから7万5000円分の残業代が減る計算です」という。

 手取り月収が減るわけだから、独身とはいえ、大きな痛手に違いない。3月は金欠社員が続出する可能性大か。

■家で隠れ残業の日々疲労が蓄積して…

 在宅勤務は基本的に9時から17時まで。これで仕事が終わればいいが、現実はそうはいかない。とはいえ、自分から「これから残業します」とは言い出しにくいだろう。

「終業を会社に報告後、再びパソコンを開く人も多いと思います。実際、“会社に見えない長時間労働”になる可能性が指摘されています。残業代が出ないのは当然ですが、仕事にメリハリがつかず、夜遅くまで引きずることが問題。あるIT系の会社では、体調を崩した社員がいるそうです」(溝上憲文氏)

 社員が倒れでもしたら、会社が労働時間の管理を把握してないも同然。妻の証言があったりすると、過労死認定に関わってくる。一大事だ。

■成果を求められる社員たちはこっそり取引先へ

 在宅ワークとはいえ、人事評価は下される。例えば、営業系。3月決算を前に、ボ〜ッとしてはいられない時期だ。

「多くの企業が半期ごとに評価を出します。3月は決算期で、設定目標を達成できたかどうかで夏のボーナスに影響します。メールやスカイプで取引先と商談することはできますが、ここ一番で成果を出すには直談判が効果的。自宅を拠点にして取引先に出向く社員は多いと思いますよ」(溝上憲文氏)

 この時期、採用担当者も忙しい。ウェブ面接をガンガンこなして優秀な人材を探している。自分が面接した学生が来てくれるかどうか。キチンと内定を出すまで、のんびりはできない。その成果が問われるからだ。

■孤独感増幅「俺がいなくても仕事は回る」

 総務省によると、テレワークの実施企業は19・1%に上る。もっとも、これは介護や育児目的で月に1日とか、週に1日実施した数字に過ぎない。今回のように数週間に及ぶ長期的な在宅ワークは、実質、ほとんどの人が初体験だろう。

「そこで問題になるのが孤独感との闘いです。日本の会社はプレゼンも資料作りもチームで動きます。互いに顔を合わせ、進捗状況を確認しながら進行しますが、テレワークだと、どうしてもコミュニケーション不足に陥りがち。そして孤独感に襲われるのです。あるIT企業では、1週間ぶりに出勤した社員が、“オレがいなくても仕事が回る”“知らないところで仕事が進んでいる”と早合点。期待されてないと思い込み、本当に転職してしまったケースがありました。20代後半の社員でしたが、テレワークが長期化するほどこうしたリスクは高くなると思います」(溝上憲文氏)

 4月あたりにひとつの部署から転職連鎖が起きては、上司のクビまで飛びかねない!?

■有休消化で会社はニコニコ、社員は…

 先日、乗り合わせたタクシーの運転手は、「今月は流していても街にお客さんがいない。ウチの会社は社員に交代で有給休暇を消化させていますよ」と言っていた。

 この有給休暇、テレワーク中の社員に半強制的に取らせる会社が出てきたらしい。

「会社にとっては、“この機に乗じて休ませてしまおう”との計算があるはず。実は昨年の4月から、“管理職でも年間5日は有給休暇を消化する”ことが法律で義務付けられました。1人取らないと30万円以下の罰金。つまり、この機会に有休を取ってもらえば、会社は法律もクリアできるというわけです」(溝上憲文氏)

 いま、休んだところで旅行に出ることもままならない。一部社員から反発が出ているのも当然か。

 

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