新型コロナウイルス影響 解雇や雇い止め 2か月で1000人余 (3/31)

新型コロナウイルス影響 解雇や雇い止め 2か月で1000人余
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200331/k10012359881000.html
NHK News 2020年3月31日 16時52分

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、勤め先の経営が悪化して解雇されたり、雇い止めにあったりした人は、観光業や宿泊業を中心にこの2か月で全国で1000人余りに上ることが厚生労働省の調査で分かりました。

新型コロナウイルスの感染拡大が雇用情勢にどのような影響を与えているのかを調べようと、厚生労働省は全国の労働局に相談に訪れた企業の経営者などに聴き取り調査を行いました。

それによりますと、ことし1月末から今月30日までの間に、感染拡大に伴う経営悪化を理由に解雇されたり、雇い止めにあったりした人は、見込みを含めて全国で1021人に上るということです。

海外からの観光客が大幅に減少していることなどから、特に観光業や宿泊業で数が多くなっています。

また、解雇や雇い止めに加え、一部の労働者を休ませるなどの「雇用調整」を行ったか、今後、調整することを検討していると答えた企業は3825社に上り、観光業や宿泊業に加え、外出の自粛の影響で飲食業でも雇用調整を行うところが目立つということです。

さらに地域別では、成田空港を利用する海外からの観光客の需要が大幅に減っている千葉県や、ライブハウスなどから感染が急激に広がった大阪府などで影響が大きいということです。

厚生労働省は「雇用情勢への悪影響は広がっており、解雇や雇い止めが起きないよう国としても支援したい」としています。

派遣切りにあった女性「生活費 急になくなった」
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、31日でいわゆる「派遣切り」にあい、仕事と住まいを失ったという女性がNHKの取材に応じました。

関西地方のホテルで派遣従業員としてレストランの配膳などの仕事をしていた20代の女性は、今月上旬に派遣会社から突然、3月末までで契約の打ち切りが告げられました。

派遣の契約期間はことし6月初めまで残っていましたが「新型コロナウイルスの感染拡大の影響で期間を短縮する」と説明され、手取りで月に18万円ほどで残りの期間の賃金は補償できないと伝えられたということです。

また、住んでいた派遣会社の寮も1日には退去するよう求められていて、出費を抑えるため実家に帰らざるをえない状況だということで、女性は「実質『派遣切り』だと思います。危惧はしていましたが、補償が全くないのは受け入れがたいですし、急に住むところがなくなり、来月どう生きていけばいいのか不安しかないです」と語りました。

派遣会社からは新たな派遣先として甲信越地方のホテルが提示されていますが、このホテルもウイルスの感染拡大の影響で来月末まで休業することが決まっています。

女性は「ホテルの営業がいつ再開されるのかが未定なので、仕事が流れてしまうかもしれないという不安があります。当面の生活費が急になくなってしまったので、政府には現金給付などの支援をスピード感をもって実施してほしい」と訴えています。

運転代行業者「弱い立場の人どう守るか考えて」
茨城県土浦市の運転代行業者では新型コロナウイルスの影響で先月以降、売り上げが例年の8割ほどに落ち込みました。

例年、今の時期は送別会や歓迎会のシーズンでかき入れ時で、およそ20人いるドライバーだけでは足りない状態でしたが、今は飲食店を訪れる人が減ったため運転代行の利用者も大幅に減少。1日当たりのドライバーを半分ほどに減らさざるをえない状況となっています。

給料は日払いのため休日が増えた分、ドライバーの収入は減っていますが、それを補償する金銭的余裕はないため、感染拡大影響がいつまで続くか見通せない中、政府系金融機関の融資を500万円ほど受けてしのぐことも検討しています。

また、民間の求人サービスには今でもドライバーの募集が掲載されていますが、面接の応募があっても断っているということです。

「ALFA運転代行」の出澤大代表は「15年にわたり運転代行業をやってきましたが、ここまで長期間にわたり営業に深刻な影響が出たことはありません。将来のことを考えるとドライバーを確保したいところですが、この騒動が落ち着くまでは控えようと思っています。売り上げが減り、ドライバーの生活も厳しくなっているので、政府には弱い立場の人をどうやって守っていくのかしっかり考えてほしい」と話していました。

また60代のドライバーは「ふだんは月末の土曜日の夜というと街はにぎわい、人もたくさん歩いているのですが、今はとても静かです。街が寂しいのを見ると悲しい気持ちになるので早く元に戻ってほしい」と話していました。

観光バス会社 ほぼ全員休業に
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、兵庫県内の観光バスを運行する会社では予約のキャンセルが相次ぎ深刻な影響が出ています。

観光バスを運行している兵庫県姫路市に本社がある「神姫観光バス」は120台の大型バスを所有していますが、先月下旬以降団体旅行の予約のキャンセルが相次いでいます。

日本海のカニを食べるツアーや、これから本格化するはずだった花見旅行、それに地元の小中学校の修学旅行や遠足もほぼキャンセルとなりました。

そこに追い打ちをかけたのが東京オリンピック・パラリンピックの延期の決定です。会社では、選手の移動用などして都内で貸切バスを走らせる予定でしたが、こちらもすべてキャンセルとなりました。

先月以降、これまでに新型コロナウイルスの影響で見込んでいた3億5000万円の売り上げがなくなり、経営に深刻な影響を与えているということです。

バスを動かせないため、会社では現在、およそ130人の運転手とおよそ30人のバスガイドのほぼ全員について基本給を支払ったうえで、今月15日から来月末まで休業させていて、今後、国の「雇用調整助成金」を申請することにしています。

「神姫観光バス」の池内康二常務取締役は「当初は運転手を車内清掃とか営業所で勤務させていましたが、いよいよ仕事がない状態となったので、3月半ばからほぼ全員を休ませています。この先もまだまだ予約のキャンセルがあり、先が見通せないのです」と話しています。

そのうえで、「経済が潤ってこそわたしたちも潤う企業なので、早く新型コロナウイルスが収束してスポーツのイベントなどが復活してほしいです」と話していました。

弁護士「会社が言っていることに疑問あれば専門家に相談を」
日本労働弁護団の棗一郎弁護士は年度末のタイミングで多くの人が派遣切りや雇い止めにあうことが危惧されるとしたうえで「リーマンショックのときも職と同時に住んでいる寮を失うという事態が起きたが、それと同じことが起きている」と指摘しました。

そのうえで「契約期間の途中ではよほどのことがないかぎり解雇はできないので、派遣労働者は期間満了までの賃金を派遣会社に請求できる。感染拡大の影響で経営が厳しくなったとか人がいらなくなったという理由で、支払いを免れることはできない」と指摘しました。

そのうえで「会社が言っていることが法律に照らして正しいことか疑問を持って確かめることが大切だ。おかしいと思ったら、行政や弁護士、または労働組合にすぐに相談してほしい」と呼びかけています。
 

この記事を書いた人