パナソニック産機システム内定者自殺事件 記者会見 (4/9)

 パナソニックの子会社に採用内定されていた学生(男性)が、内定者の研修の一環として全員がSNS交流サイトに登録を強制され、そのSNSを通じてパワハラを受け、入社直前に自殺しました。この事件をめぐって、4月9日、遺族側の川人弁護士が記者会見しました。以下、メディアで報じられた情報を元に事件の概要を整理してみました。
 この間、若い労働者がパワハラを受けて自殺する事件が報道されていますが、「採用内定段階でのパワハラ」として、大きく注目されています。
 人間らしく働けないブラックな職場の現状を示す事件として、続報にも注目していきたいと思います。

◆当事者
 パナソニックの子会社「パナソニック産機システムズ」(本社=東京墨田区)
 就職が内定していた男子大学生(当時22歳)

◆経緯(遺族側記者会見についての報道より)
 会社から内定を受ける
 内定者研修
 内定者全員をSNS交流サイトに登録強制
 会社人事担当者からSNSを通じたパワハラを繰り返す
  ・この会社では研修の一環として男子学生を含む内定者20人全員をSNSの交流サイトに登録させ、人事担当の管理職は内定者に対して、毎日閲覧し投稿するよう求めていた(NHK 4/9)
  ・管理職は投稿などが入社後の配属先にも影響するとした上で、「僕は露骨にえこひいきするからね。なめるなよ」「丸坊主にして反省を示すか?」などとみずからも投稿(NHK 4/9)
  ・人事課長(当時)から入社後の配属先の検討にも影響する旨を伝えられた上で、強制的に毎日、内定者向けSNSへのをさせられたという。さらに人事課長は指定した本の感想を投稿するよう課題を課したほか、以下のような投稿を行っていた。
   「誰がいつサイトに入っているかは人事側で見えています」
   「毎日ログインしていなかったり、書き込まない人は去ってもらいます」
   「無理なら辞退してください、邪魔です」
   「僕は露骨にえこひいきするからね。なめるなよ」
   「丸坊主にして反省を示すか?」
   「ギアチェンジ研修は血みどろになるくらいに自己開示が強制され、4月は毎晩終電までほぼ全員が話し込む文化がある」(biz-journal 4/10)
 入社直前の2019年2月に自殺
 2020年4月9日 遺族側代理人が記者会見

◆遺族側
 同社と親会社のパナソニックに対し、謝罪と賠償などを求める要望書を提出(時事通信、4/9)
 遺族は、管理職の投稿などがパワハラに当たり、その結果、自殺したとして、会社に対して謝罪や損害賠償を求める
 遺族は「息子は心理的な拘束と圧迫に耐えかね、就職先に絶望して自死してしまいました。それを放置していた会社を許すことができません」などとコメント(NHK 4/9)
 就職先としてパナソニック産機システムズを選ぶことがなければ「こんなに早く旅立ってしまうことはなかった、あの日に戻れるなら戻りたいと思うと、毎日涙が溢(あふ)れ、悔やんでも悔やみきれません」といい、「追い詰めた人事課長Aや、それを放置していた会社を、一生許す事が出来ません」などとつづった。(朝日 4/9)
 遺族側代理人=川人博弁護士
 今後、損害賠償も求める方針

◆会社側
 「研修は入社後いち早く活躍してもらうためだったが、行きすぎた指導があり非常に不適切だった。亡くなられた内定者に哀悼の意を表し、遺族にもお悔やみを申し上げる」(共同通信)
 行きすぎた指導だったとした上で自殺の原因となった可能性があるとして「誠に申し訳なく謹んでおわび申し上げます。事実を厳粛に受け止めこのような事態を繰り返さないよう、再発防止に取り組んで参ります」(NHK 4/9)

おしらせ(パナソニック産機システムズ株式会社 Homepage)

当社入社内定者が亡くなられたことについて

 2019年2月にパナソニック産機システムズ株式会社の内定者が、入社前に亡くなられた事は事実です。
 会社として誠に申し訳なく、謹んでお詫び申し上げます。
 亡くなられた方に謹んで哀悼の意を表すると共に、ご遺族の皆様に衷心よりお悔やみ申し上げます。
 入社前の研修中に亡くなられた事実を厳粛に受け止め、このような事態を二度と繰り返さないよう、再発防止に取り組んでまいります。
                        2020年4月9日
                        パナソニック産機システムズ株式会社

 ◆会社情報
 パナソニック産機システムズは、設立1994年9月21日の非上場株式会社で、本社は、東京都墨田区にあります。従業員は1900名で、事業としては、業務用設備機器・システムの販売・施工・サービスで、業種は産業用機械・機器卸・電気設備資材卸、設備工事(空調・配管)〔日経NEEDS業種〕です。全国7支店があり、資本金は、3億100万円で、労働組合の存在は不明。(日経会社プロフィル2019年より)
 2020年4月現在、代表取締役社長執行役員は稲継哲章氏以下10名の役員(全員男性)で、会社HP によれば、
 パナソニックグループの様々な製品・サービスでお客様に新たな価値を創造してまいります。
 私たちはパナソニックグループにおける業務用設備機器・システムの直販・サービス・エンジニアリング会社です。
 お客様とのコミュニケーションを深め、信頼関係を築き、本当にお客様が必要としているものは何かを一緒に考え 3つのソリューションによって永続的に価値を提供し続けてまいります。
 なお、会社HPの採用情報は、「現在メンテナンス中」です(2020年4月11日現在)。

【出典】
内定学生自殺「SNSパワハラ」(NHK、4/9)
「放置した会社を一生許す事が出来ません」 内定者遺族
パナ子会社内定者自殺は研修原因 ハラスメント繰り返しと遺族(中日新聞、4/9)
「倍返し」「今でしょ」、松下幸之助の金言も… パワハラ自殺報道のパナ子会社、「伝説の人事」メッセージの中身(J-cast、4/10)
内定者自殺「パワハラ原因」 パナ子会社に謝罪要求―遺族側(時事通信、4/9)

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