韓国政府、280万世帯に「緊急災難支援金」を支給開始 (5/4)

 韓国では、5月4日から、コロナ対策の一環として「緊急災難支援金」の支給が始まりました。

 日本では、新型コロナをめぐって、PCR検査を拡充して対応する点で世界各国では当然の対策とはかけ離れた、検査を抑制する「不可解な対策」が取られ続け、感染者拡大が止まりません。そこで、安倍内閣が打ち出したのが、「緊急事態宣言」で、通常の経済や教育、日常生活などをほぼ全面的にストップするという劇薬的非常措置です。

 この非常措置は、大きな副作用を伴う究極手段です。それに伴う副作用への対応が余りにも不十分です。休業を強いられる零細・中小業者には「補償はしない」という驚くべき対応をとり、営業支援どころか、見殺しの廃業促進策としかいえません。そして、強制的な休業が広がる中で、働く人の雇用も一挙に危機に陥っています。正規雇用も解雇数が増加していますが、雇用の安定性がきわめて弱い「脆弱(ぜいじゃく)労働者層」である非正規雇用やフリーランスの人々は、仕事や生活の大きな困難に直面しています。雇用を失い、収入を奪われ、住居もなくした人が増えています。日本では、ホームレスが急増していると外国メディアから指摘される程です。

 こうした中で、紆余曲折を経て、安倍政権は、やっとのことで一律10万円支給を補正予算で決定しました。しかし、熱意がこもっていない対策です。10万円給付が、いつから、どのように支給されるのか、自治体にまかされて明確ではありません。

 これに対して、韓国は、政府が先頭に立って、いのちを守ることを最優先にして、徹底したPCR検査を軸に感染拡大を抑える対策に取り組んできました。これは、保守政権の時代、医療の民営化など「いのちより金」重視の政策のために、マーズへの対応が遅れ、多くの死亡者が出ました。市民や医療関係者からの批判で、感染症対策が準備されていたことが背景にあったことを忘れることはできません。その結果、休業を強制する非常措置をできるだけ抑えて、雇用や生活を日本のようには過酷にせずに何とか止めることに成功しています。

 しかし、それでも、今回のコロナ感染症拡大で国民生活が大きな被害を受け、生活上の自粛を求めたことに対して「緊急災難支援金」の支給を決めました。なお、総選挙(4月15日)前に、与党(共に民主党)の中では、これを全国民に100万ウォン支給に引き上げるという案が急速に高まりました。与党が圧勝した国会で、この案がどうなったのかを調べているところです。しかし、それを待つことをせず、一番苦しい階層に最優先で支給を実施したことになります。

〔給付対象〕
 まず最初に5月4日から社会的弱者層280万世帯に支給することになりました。この280万世帯は、国民全体の中で所得下位70%に相当する低所得層です。これは、緊急支援がとくに必要である世帯で、全世帯の約13%です。公的扶助法である「基礎生活保障法」の生計給与や基礎年金、障害者年金を受給する世帯のうち、住民登録票の世帯主と世帯員全員が受給者であることが要件となっています。
〔給付金額〕
 給付される金額は、世帯単位で、1人40万ウォン、2人60万ウォン、3人80万ウォン、4人以上100万ウォンに区別されています。なお、5/4の日韓の為替レートからは、それぞれ3万5千円、5万2千円、7万円、8万7千円になります。
〔受給までの手続き〕
 政府は初期の混雑を避けるため、来る16日までは曜日制で申し込みを受け付けます。5月3日午前9時から災害支援金照会サービスのホームページで、世帯主かどうかと世帯員数を確認することができ、世帯主の出生年度の末端数字を基準にした曜日制で運営され、週末には誰でも利用できます。世帯は3月29日基準で住民登録票に登録された世帯が基準です。4月30日まで約1ヶ月間の婚姻、離婚、出生、死亡などは邑面洞の住民センターで異議申し立てを受け付け、反映する必要があります。
〔受給方法〕
 クレジットカードチャージ方式で申請する場合、世帯主が本人名義のカードに直接申請しなければならず、約2日後に支払われます。
 地域愛商品券・プリペイドカード方式は、世帯主も代理人も申請でき、できるだけ申請現場で支給します。
 支給された支援金は8月31日まで使用でき、残りの金額は寄付されます。申請開始日の3か月以内に支援金を申請しなければ、これも全額寄付とみなされます。
〔S.Wakita コメント〕
 今回の支援金だけでは、日本の10万円と比べて金額は多くありません。しかし、
 ①こうした支援金は、韓国の歴史で、これまでになかったこと
 ②申請にはオンラインを使うことができ、早ければ2日間で口座に振り込まれるなど迅速支給が重視されていること、
 ③身体が不自由な高齢者や障碍者のために、電話で連絡すると「住民センター」(日本の市・区役所、町村役場にあたる)から担当者が訪問して来て受け付けてくれる画期的なサービスがあること、
など、特筆すべき点です。

 なお、自治体別に、政府の上記支援金に上乗せする形で、独自の支援金が準備されています。
 また、政府は、低所得層への支援金を最優先支給するのと並行して、4月に、雇用不安定な労働者、フリーランスのための仕事関連の支援金や対策を発表し、一部は既に施行しています。これについては、別途、紹介する予定です。

【出所】
行政安全部 報道資料「緊急災難支援金」支給開始(2020.5.3) 〔試訳文責:S.Wakita〕
新型コロナ支援金支給へ 6700億円の補正予算案=韓国政府(2020.4.16聯合News)

〔行政安全部:報道資料 2020.5.3〕

「緊急災難支援金」支給開始
-緊急な支援が必要な約280万世帯に現金直ちに支給-

□行政安全部(長官ジン・ヨン)は5月4日(月)から緊急な支援が必要な階層を対象に「緊急災難支援金」を現金で支給する。
○現金を受ける対象者は基礎生活保障生計給与、基礎年金、障害者年金受給世帯のうちで住民登録票上の世帯主と世帯員皆が受給者である世帯である。

【現金受給の有無例示】
・住民登録上家族皆が生計給与受給者である場合⇒ 現金支給対象
・基礎年金を受ける老人だけで構成された世帯⇒ 現金支給対象
・障害者年金を受ける障害者だけで構成された世帯⇒現金支給対象
・本人と息子がいる2人世帯か、本人だけ生計給与受給者である場合
⇒ 現金受給対象に該当しない
・基礎年金を受ける夫婦と息子夫婦が共に世帯を構成する場合
⇒ 現金受給対象に該当しない

○上記基準により現金を受ける対象者は約280万世帯*で、総支援対象世帯(2,171万世帯)の13%に該当する。
* 270万世帯より増えたのは基礎生活保障生計給与・基礎年金・障害者年金を重複受給受けるかで規模が予想より少なかったため

□自治体の条件により具体的な見解は変わり得るが、概して現金受給対象者は5月4日(月)17:00以後から既に登録した口座*で現金受領の有無を確認できるものと見られる.**
* 生計給与、基礎年金、障害者年金が支給される口座
** 2個以上の給与を重複して受領している場合、生計給与→基礎年金→障害者年金の登録口座順に現金支給
○特に、去る5月1日(金)中央災害安全対策本部決定により緊急災難支援金も「差押さえ防止通帳(約23.5万世帯)」で支給できることになって、現金支給が支障なく推進されると展望する。
○ただし、現金受給対象者に該当するが、支給口座にエラー*がある場合、5月4日(月)まで現金が支給されないこともある。
* 口座解約、番号誤・脱字、預金者名不一致
○この場合、管轄地方自治体でエラー口座を最大限速かに検証し5月8日(金)まで現金支給を完了する計画である。

□これと別に現金受給対象の有無を確認したい国民は、邑面洞(町村)住民センターに訪問してこれを確認することができる。
※本人身分証持参必要

□現金受給対象者に該当しなかった国民は5月11日(月)から所持している信用・チェックカードにポイント増加申請が可能で、
○ 5月18日(月)からは邑面洞住民センターや地域金庫銀行で地域愛商品券やプリペイドカードを申し込むことができる。

□ユン・ジョンイン行政安全部次官は「現金支給は生計に困難を経験する国民を至急に支援するためのもの」と話し、
○ 「現金で直接支給されただけ国民が最も必要とする所に緊急災難支援金が適切に使われて国民生計に役に立つことを期待する。」と表明した。

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