守口市の学童保育指導員雇い止め事件に関連する情報(5/18, 8/22更新)

 守口市が民間委託した学童保育で、3月末に雇い止めされた指導員10名が、2020年5月15日、大阪地裁に提訴しました。5月10日、朝日新聞が提訴に向けた動きを大きく報道し、提訴当日は、全国の新聞、NHK、民放各社がテレビニュースで報道しました。背景には、守口市の市長(大阪維新の会顧問)が進めてきた学童保育民営化があります。19年4月に委託された民間企業(共立メンテナンス)は、指導員組合との団交を拒否し、4月に大阪府労委から救済命令が出ています。その直前、コロナで学童保育が大変なときにベテランの指導員を雇い止めしたことになります。
 働く者にとって、雇用や労働組合の権利にかかわる大きな意味をもつ裁判だと言えます。
 また、学童保育は、子どもが生き生きと過ごすだけでなく、働く保護者が安心して子どもを預けることができる場でなければなりません。
 人間らしく働き暮らせる社会をめざすAsu-netとしても、この事件には無関心ではいられません。問題の背景を深く知り、Asu-netとしても積極的に支援することができればと思います。以下、事実経過を中心に事件の概要を整理してみました。

雇い止め裁判原告団の情報を伝える「原告団にっき」のFacebookが開設されました。
最新の情報はこちらにアクセスして下さい。
守口市学童保育 原告団にっき (Facebookへリンク)
>守口市学童保育雇い止め裁判の原告団活動にっきです(*’v’*)このページから、私たちの活動を発信していきたいと思います!
>私たちは、守口市が学童保育を直営してきた時から長年、指導員として働いてきました。子ども達が安心して通いたくなる学童保育を作ろうと、保護者の皆さんといっしょに力を合わせて、現在の守口学童保育をつくりあげてきました。ところが、コロナ対策に追われる3月23日、指導員13人が突然の雇い止め宣告を受けました。  私たち守口学童保育指導員の原告団10人は、「一日でも早く子どもたちのところに戻りたい」が一番の願いです。 #守口市学童保育雇い止め裁判 #共立メンテナンスは雇止めを撤回せよ #子どもたちのところに戻してください

2020年6月10日 「支援共闘会議」発足
 (正式名「守口学童指導員の不当解雇撤回と職場復帰をめざす支援共闘会議」)
  →支援共闘会議ビラ

大阪地裁への提訴をめぐるマスコミ報道

学童保育 雇い止めは不当と提訴 NHK

2020年05月15日 17時00分

 大阪・守口市が運営を民間委託している学童保育をめぐって、指導員だった10人が運営会社から不当に雇い止めされたと主張して雇用の継続などを求める訴えを起こしました。

 大阪地方裁判所に訴えを起こしたのは、守口市の学童保育の指導員だった33歳から57歳の男女10人です。
守口市は、去年4月に学童保育の運営をホテル経営などを行っている会社に民間委託しています。
 原告たちは、市の直営のときから7年から36年にわたってアルバイトや嘱託職員として働いていましたが、委託会社の契約社員の形になって1年がたったことし3月、会社から雇い止めされたということです。
 会社は、学童保育の運営方法を批判したことなどが懲戒処分にあたるという通知書を渡したということで、原告たちは事実ではないと主張して、会社に雇用の継続と1人110万円の賠償などを求めています。
 原告の1人、水野直美さんは、「新型コロナウイルスへの対応で、学童保育が大事な時期に雇い止めするのは理不尽だ。早く子どもたちの元へ戻してほしい」と話しています。
一方、提訴された会社「共立メンテナンス」は、「雇用契約に基づき、職場での勤務状況によって判断し、対応した」とコメントしています。

学童保育の指導員、雇い止めで提訴 30~50代男女10人 大阪・守口 毎日新聞

毎日新聞2020年5月15日 19時18分(最終更新 5月15日 19時18分)

大阪地裁=大阪市北区で、曽根田和久撮影

 大阪府守口市の学童保育(児童クラブ)で指導員をしていた男女10人が15日、雇い止めされたのは無効だとして、児童クラブの運営会社に雇用継続などを求める訴えを大阪地裁に起こした。

 会社は全国でホテルを展開する「共立メンテナンス」(本社・東京)。市直営だった児童クラブ運営は2019年4月に民間委託された。公募に応じた同社が選ばれ、市内21のクラブ運営を受託している。

 訴状によると、30~50代の原告は市直営だった頃から指導員として勤務。民間委託に伴って19年4月、同社と1年間の雇用契約を結んだ。しかし、「会社に反抗的だった」「保育せずに保護者と話し込んでいた」などと文書で注意を受け、20年3月末に雇用契約の更新を拒否された。

 原告側は、少なくとも同社の受託期間となる5年間は勤務を続けられる立場にあったと主張。注意文書の記載は事実関係に誤りがあり、仕事上の具体的なミスの指摘もないことから、雇い止めの正当な理由がないと訴えている。4月以降の賃金相当額や雇い止めによる慰謝料も求めている。

 提訴後、指導員を36年間続けてきた原告の水野直美さん(57)は「子どもが楽しめて、安心して通えるクラブを作り上げてきた。真面目にやってきたのに理不尽だ」と話した。共立メンテナンスは「雇用契約に基づき勤務状況で判断した」としている。【伊藤遥】

【5/15提訴関連情報】
40年働いた学童保育、校門でクビ宣告 保護者も不信感(2020.5.10)朝日新聞
□民間委託、雇い止めトラブル 大阪で学童指導員10人、提訴へ(2020.05.10朝日新聞)
□学童担い手、不安定な立場 保護者ら戸惑い 指導員雇い止め(2020.05.10朝日新聞)
学童保育の元指導員が「雇い止め」無効求め訴え(2020.5.15関西TV)
学童保育の指導員が「雇い止めは無効」と提訴 大阪地裁 (2020.5.16毎日TV)
学童保育指導員の解雇無効と提訴 コロナ禍中「現場は混乱」―大阪地裁(2020.05.15時事通信)
守口市・学童保育指導員大量雇止め事件で集団提訴(2020.5.15 谷真介弁護士ブログ)
団交拒否と雇い止め許すな 守口市の委託責任は重大 (2020.5.7 自治労連)

主な事実経過

  事項 備考
2011年8月 西畑勝樹氏、守口市長就任 (現在、大阪維新の会顧問)
 民間委託できるものはすべて委託するとの方針
 
2016年 守口市、「第二期改革ビジョン案」
 学童保育の民間委託案を含む
 
   12月 「改革ビジョン」に対するパブリックコメント
 854通のコメント(大部分が学童保育に関するコメント)
 
2017年9月 「もりぐち児童クラブ入会児童室民間委託によるサービス拡充プラン」に対するパブコメ募集
・1192通のパブコメ
 大半は民間委託に反対。
 主に、現在の保育内容、指導員をそのままにしてほしいなどの意見
 
2018年2月 守口学童保育連絡協議会、民間委託反対の請願署名4万筆提出(2月13日) 請願議案
2018年3月 市議会において、民間委託の方針を決定  
   7月 守口市、プロポーザル(公募型企画競争方式)により共立メンテナンスに優先交渉権を認める
・プロポーザル選定委員会答申書の「優先交渉権者の選定に係る講評及び付帯意見」で「現支援員等の雇用については、保護者や児童の安心確保のために転籍希望者の受け入れや処遇に係る具体的な提案がなされており、かつ収支計画書においてその提案が裏付けられていることは高く評価できる」など記載。
 
 8月21日 守口市、共立メンテナンス社と業務委託契約を締結した(受託期間は5年)
・委託後の「雇用を希望する指導員の雇用、保護者行事継続など」の公約が盛り込まれていた
委託時の契約事項(=仕様書)に「民間委託後も引き続き従事しようとする転籍希望者は必ず雇用する」と明記
 
2019年4月 守口市、学童保育を共立メンテナンス社に委託  
   4月 指導員労働組合結成
・指導員たちは、民間委託とともに一般の民間雇用労働者(被用者)となって組合結成へ
・直ちに4月1日、労働条件改善を求める要求をまとめ、団体交渉の開催を申し入れ
 
   9月11日 大阪府労働委員会に、団交応諾とポストノーティスを求めて救済命令の申立  
2020年    
 3月2日 新型コロナで休校措置  
 3月3日 「守口学童保育指導員労組を支援し学童保育の充実を求める会」、守口市長に対して継続雇用を求めて要望書を提出  
  3月末 ベテラン指導員13名を雇い止め(不当解雇)
・13名のうち10名は35年間勤務のベテラン
・年度替わりの前に、雇用の継続等に対して希望調査を行ったが、これら13名については、希望調査も行わず、3月末、一枚の「通知書」をもって解雇を通告(朝日)
 
 4月22日 大阪府労委 団交拒否について団交応諾、ポストノーティス命令  
 5月10日 朝日新聞が報道  
 5月15日 雇い止めされた指導員10名が雇い止めは無効と大阪地裁に提訴  
6月10日 守口学童指導員の不当解雇撤回と職場復帰をめざす支援共闘会議結成準備会(国労大阪会議大会議室)  
7月2日 大阪地裁第1回期日(202号法廷)
10:30 支援共闘会議集会 11:30 法廷で原告代表が意見陳述 11:45 報告集会
原告団にっきFB
7月20日 大阪地裁第2回期日(202号法廷)  
8月6日 受託事業者から不当に解雇されたとして、元指導員ら10人が加入する労働組合が大阪府労働委員会に不当労働行為の救済を申し立て  
9月7日 大阪地裁第3回期日(202号法廷)  
9月10日 団交拒否中央労働委員会1回期日  
9月14日 雇い止め大阪府労働委員会期日  

 

大阪府労働委員会 団体交渉拒否について救済命令(2020年4月22日)

                   主文
 1 被申立人は、申立人からの平成31年4月1日付け要求書、令和元年5月23日付け要求書及び人事異動についての同年7月25日付け要求書に係る団体交渉申入れに応じなければならない。
 2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交するとともに、縦2メートル×横1メートル大の白色板に下記の文書と同文を明瞭に記載して、被申立人関西支店及び守口営業所の従業員の見やすい場所に2週間掲示しなければならない。
                    記
                                  年  月  日
守口市学童保育指導員労働組合
執行委員長 水野直美 様
                               株式会社共立メンテナンス
                               代表取締役上田卓味
当社が、貴組合からの平成31年4月1日付け要求書、令和元年5月23日付け要求書及び同年7月25日付け要求書に係る団体交渉申入れに応じなかったことは、大阪府労働委員会において労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。

【関連情報】
愛須勝也弁護士_守口市学童保育労組 不当労働行為救済命令申立事件(民主法律時報)
□大阪府労委が団交応諾命令 民間会社が児童クラブ指導員不当解雇!(2020.04.24赤旗)
学童指導員「収入減・雇い止め」厳しすぎる現実(2020.4.30東洋経済)
守口学童 公設公営から民間委託へ?(2017.10.19 大阪学童保育連絡協議会)
【5/15追記】学童保育を受託した共立メンテナンスと労働組合(学童支援員)で労働問題が頻発中 大阪府守口市(2020.5.18 よどきかく)
学童保育の全児童対策事業への一元化を許さない運動 −守口市の学童保育条例廃止の動きと闘う−(2005/09 上垣優子)

被告会社関連の主な情報(会社ホームページより)

 共立メンテナンス https://www.kyoritsugroup.co.jp/company/ (2019年6月26日現在) 
 会社名 株式会社 共立メンテナンス   Kyoritsu Maintenance Co., Ltd.
 設立 1979(昭和54)年9月27日   従業員数 5,081名(連結) *2019年3月31日現在
 資本金 79億6,048万6,119円 *2019年3月31日現在
 本社 〒101-8621 東京都千代田区外神田2-18-8  TEL:03-5295-7777
 役員  代表取締役会長 石塚晴久  代表取締役社長 上田卓味

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