個人的に、労働関連情報を、主にWebや、定期購読している雑誌、新聞などを使って集めています。このブログに、テーマ別に注目情報を整理して、できるだけ頻繁、かつ、タイムリーにアップしていきたいと思います。
まず、この秋にWebで取り上げられた、非正規公務員問題をめぐる記事、論考などを集めてみました。
Asu-netでも、大阪で毎年、開催される「官製ワーキングプア集会」の中心になっているメンバーもいますが、一般的にはメディアなどで大きな注目を集めてきたとは言えません。しかし、コロナ禍で住民サービスの第一線で働く公務員の多くが非正規雇用の不安定で劣悪な状況で働いていること、エッセンシャルワークに従事していることが明らかになりました。
今後、これ以外の情報があれば、さらに追加していく積もりです。(2021年12月6日 文責:swakita)
なお、韓国では、公共部門の非正規職たちが全国ストライキをするなど集団的な闘いで自らの地位を改善する運動を進めています。以下は、最近の記事です。韓国では、この非正規職の人たちも「非正規公務員」ではなく、民間労働者と同様にストライキ権をもち、また、日本の労働契約法よりも進んだ2年での無期雇用転換制度が適用されます。日本の非正規公務員は、こうした韓国や欧州諸国の公共部門労働者に比べて余りにも無権利で理不尽な法的地位におかれています。
公共部門の非正規職労働者たちが労働者大会を開催…差別解消などを要求=韓国(Wow Korea 2021.11.20)
(更新:2021年12月19日)
Webで閲覧できる関連論説などを追加しました。
「年度末雇い止め相談の案内」も掲載しました(最終更新:2022年2月14日)
公益社団法人日本図書館協会非正規雇用職員に関する委員会「会計年度任用職員に関する提言」2022/01/24
「今回の会計年度任用職員制度は、「働き方改革」の一環として、民間職員対象の同一労働同一賃金政策とも呼応するものであり、法整備とともに雇用や労働条件の改善が期待されるものでした。しかし勤務時間によって給与や手当に差をつけるなど制度そのものが十分とは言えない上に、自治体による運用が様々であり、実施後、総務省や労働組合などの調査により現場で色々な問題が起きていることが分かりました。
安定した雇用と良好な労働条件は、図書館職員に必須である経験と知識の蓄積にとって必要なものであり、図書館職員の多くを占める会計年度任用職員の働き方は、図書館の維持、発展に大きな影響を及ぼすものです。そのためここに提言を出し、会計年度任用職員の任用の実際と制度の改善を求めるものです。」(はじめに)
提言内容
1.制度の趣旨に沿った実施
2.より望ましい制度の実施
3.法改正を含む望ましい制度の改革
非正規公務員関連の注目記事
- 【連載・非正規公務員に明日は見えるか①】待遇改善図った「会計年度任用職員」 実態は雇い止め、パート転換で賃金下がる(南日本新聞2021/11/20)
地方自治体で働く非正規公務員を「会計年度任用職員」として扱う制度がスタートして約1年半が経過した。「嘱託」や「臨時」などあいまいだった立場を明確にし、ボーナスの支給など待遇改善を図る狙い。だが、現場からは「賃金が下がった」「雇い止めされた」などの声が絶えない。地方自治を支える人々に何が起こっているのか。…■更新が不安 ■パート転換が進む - 【連載・非正規公務員に明日は見えるか②】生徒にとって同じ「先生」 求められる仕事も同じ でも待遇に格差 同一労働同一賃金は幻か(南日本新聞2021/11/21)
県立高校で美術を教える非常勤講師の男性は、会計年度任用職員になって時給が300円近く下がった。新制度で報酬単価が3区分から一つに統一されたためだ。「事前に通知もなく、ショックだった」。月額で2万円減った仲間もいる。…■同一賃金どこへ ■狭き門 - 【連載・非正規公務員に明日はあるか③】減少続ける正規職員 その穴埋めにされる任用職員 災害対応を任せるケースも出てきた(南日本新聞2021/11/22)
財政難を背景に自治体の正規職員の採用は減っている。その穴埋めに、非正規への置き換えが進む。災害対応など正職員が担った仕事を、会計年度任用職員に任せる動きも出ている。 - 【連載・非正規公務員に明日はあるか④】任用職員の8割が女性 年収200万円以下は5割超 「女性で非正規、二重の差別構造がある」(南日本新聞2021/11/23)
女性は数年前に非正規の相談員になった。悩みを丁寧に聞き取り、相談者に寄り添う。時にはDV加害者の電話もくる。「しんどいが、困っている人の支えになりたい」との熱意が支えてきた。だが会計年度任用職員になっても待遇は低く、毎年度の公募で先は見えない。「法律や心理の勉強を重ね、経験を積んできたのに、自分はこの程度なのか、と自信を失ってしまう。専門員としての仕事を評価してほしい」
【連載・非正規公務員に明日はあるか⑤】専門職の正規採用を 保育や介護、DV相談支援 公共サービスの低下懸念(南日本新聞2021/11/24)
■地方自治総合研究所・上林陽治研究員に聞く
非正規職員が勤務中死亡 勤務管理ずさん、2年過ぎても補償審査始まらず 屋久島町(南ニッポン新聞2021/11/12)
「屋久島町の非正規職員の男性が2019年8月、勤務中に死亡し、2年以上たった現在も労働災害補償の実質審査が始まっていないことが11日、南日本新聞の取材で分かった。地方公務員災害補償法に基づき、公務災害の審査対象となる「常勤的非常勤職員」に当たるか、入り口の段階で関係機関の判断が分かれており、町が男性の勤務実態を正確に把握していなかったことが原因とみられる。」
要望書「女性の非正規職問題の対象に、公務部門の非正規職も入れてください」(ハムネット2021/11/28)
非正規公務員関連論考(Web上の情報)
- 上田真理「非正規公務員と社会保障法」(東洋法学2020年3月)
- 河合薫「上級官僚やりたい放題。低賃金にあえぐ非正規地方公務員の実態」(MG2 News2019年10月3日)→ New
- 河合薫「守るのは「上級国民」? パワハラ公募横行、霞が関の深き罪」(日経ビジネス2022年1月12日)→ New
- 河合薫「このままでは“一億総非正規”待遇に!? 郵政は「正社員の休みを減らし格差解消」」(2022年1月14日)→ New
- 川村雅則「非正規公務員問題に対する労働組合の取り組みはどこまで進んだか」(生活協同組合研究2018年9月)★
- 川村雅則「憲法の示す価値から、自治体で働く非正規公務員のことを考えてみました。」(まなぶ2021年10月)★
- 川村雅則「地方自治体における公共サービスの提供に従事する非正規労働者のおかれた現状」(生活経済政策2021年9月)★
- 川村雅則「非正規労働者の現状と今求められる運動の課題──非正規公務員問題を題材に」(月刊全労連2017.7)
- 山下弘之「役所が生み出すワーキングプア」(ひろばユニオン2019年8月)★
- 山下弘之「会計年度任用職員制度新設と自治体における課題」(埼玉自治研2018年3月)」★
- 瀬山紀子「非正規公務員の現場で起きていること—働き手の視点から—」(生活経済政策2020年8月)★
- 瀬山紀子「エッセンシャルワーカーのあり方―公務非正規問題を足掛かりに」(2020年11月21日)
- 瀬山紀子「公務非正規女性全国ネットワークの調査を実施して」(住民と自治2021年12月号)★
- 瀬山紀子「<生きる>を支える仕事──非正規労働の現場から」(『月刊社会教育』 63(3)、2019年3月号(No.754))★→ New
- 橘玲「誰もが知っていながら報じられない「労働者」以前に「人間」としてなんの権利も認められていない非正規公務員の現実」→ New
- 千葉伸次「会計年度任用職員、取り組む処遇改善」(ひろばユニオン2021年5月)★
- 安田真幸「非正規公務員にこそ労働基本権を~4労組によるILO取組の報告~」(季刊労働者の権利2020年10月)★
- 渡辺百合子「官製ワーキングプアの真実【上】 公務職場は非正規女性の”善意”でぎりぎり維持されている」★
公務非正規女性全国ネットワーク(通称:はむねっと)
官製ワーキングプア研究会ホーページに、数多くの情報が掲載されています。
★印は、北海道労働情報NAVIブログに掲載されているものです。
目次
第一部 非正規公務員のリアル
第1章 ハローワークで求職するハローワーク職員
――笑えないブラックジョークに支配される現場
第2章 基幹化する非正規図書館員
第3章 就学援助を受けて教壇に立つ臨時教員――教室を覆う格差と貧困
第4章 死んでからも非正規という災害補償上の差別
第5章 エッセンシャルワーカーとしての非正規公務員
――コロナ禍がさらす「市民を見殺しにする国家」の実像
第二部 自治体相談支援業務と非正規公務員
第6章 自治体相談支援業務と専門職の非正規公務員
第7章 非正規化する児童虐待相談対応――ジェネラリスト型人事の弊害
第8章 生活保護行政の非正規化がもたらすリスク
第9章 相談支援業務の専門職性に関するアナザーストーリー
第三部 欺瞞の地公法・自治法改正、失望と落胆の会計年度任用職員制度
第10章 深化する官製ワーキングプア――とまらない非正規化、拡大する格差
第11章 隠蔽された絶望的格差――総務省「地方公務員の臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会」報告
第12章 欺瞞の地方公務員法・地方自治法改正
第13章 不安定雇用者による公共サービス提供の適法化
第14章 失望と落胆の会計年度任用職員制度
第四部 女性非正規公務員が置かれた状況
第15章 女性活躍推進法と女性非正規公務員が置かれた状況
第16章 女性を正規公務員で雇わない国家の末路