スポニチ 九電やらせメール やっぱり組織ぐるみだった? 

 2011年7月9日スポニチ

 運転停止中の九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働に関して安全性を説明した6月末の番組をめぐり「やらせメール」が発覚した問題で、当時、原子力部門のトップ2だった副社長と常務が番組の周知を求める形でメール作成に関与していたことが8日、分かった。九電は弁護士らによる第三者委員会を設置、処分を検討する。原発部門の組織ぐるみで行われた可能性が強まり、電力会社全体の信頼失墜は不可避だ。

 関係者によると、副社長や常務(いずれも株主総会があった6月28日付で退任、現在は関連会社社長)は原子力管理部長(執行役員)に「よろしく頼む」などと、子会社4社の社員らが番組を見るよう周知を求めた。九電の松尾新吾会長は、副社長らが「国の番組を支援、協力してやれ」と指示したと明らかにした。

 メールを作成した課長級の男性社員には同部長が直接指示していた。関係者は「“番組で反対意見が圧倒的だったら大変だ”との意識が(社内に)あったと思う。株主総会を控え、番組は重要課題だった」と指摘した。

 番組は経済産業省主催で6月26日放送。2日後の同28日に九電の株主総会が予定されていた。九電は副社長らが実際のメール内容をどこまで把握していたか調べている。

 メールを作成した男性社員は、6月22日にメールを原発関連の3事業所と子会社4社に送信、原発再稼働に賛成する意見を番組に送るよう依頼した。指示を受けた子会社の4人はいずれも九電の原発本部出身で、「やらせメール」問題は原子力部門の組織ぐるみで行われた可能性がある。

 依頼メールを受けた子会社の1社、西日本プラント工業(福岡市)は全社員約2100人に聞き取り調査を実施。複数の社員が番組にメールで意見を送ったと明らかにした。同社は社内ネットワークの掲示板にメールと同内容の文書を掲載、掲示板には約1400件のアクセスがあった。

 九電の真部利応社長は8日、経済産業省に謝罪に訪れ、松下忠洋副大臣から「組織ぐるみではないか」と叱責(しっせき)された。6日の会見では「誰が指示したか分からない」と話していた。

 海外出張先から予定を早めて帰国した松尾会長は8日、福岡市内で「九電の名前で社員がしたことはトップの責任」「私も同じように(責任が)ある」などと言及。真部社長の辞任は不可避の情勢とみられたが、同日夜になって「もうちょっと仕事をさせたい」と早期辞任に否定的な姿勢を示した。身内への甘さも加わり批判がさらに高まりそうだ。

 ≪関連会社社員 怒りの内部リーク≫「やらせメール」問題の発覚は、九電の関連会社社員の内部リークがきっかけだった。6日の衆院予算委員会でこの問題を指摘した共産党の笠井亮議員によると、関連会社の男性社員が番組放送前日の6月25日、福岡県内の党事務所を訪れ、問題のメール文書を提供。男性は「こういうやり方はおかしい」と憤慨していたという。

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