元建設作業員らによるアスベスト訴訟の判決を聞き、遺影などを手に涙する原告団の女性たち=東京都千代田区の東京地裁前で2012年12月5日、須賀川理撮影
建設現場でアスベスト(石綿)による健康被害を受けたとして東京、埼玉、千葉の元建設作業員308人(うち199人死亡)について、本人と遺族計337人が国と建材メーカー42社に慰謝料など総額約120億円の賠償を求めた訴訟で、東京地裁は5日、国の責任を一部認め総額約10億6000万円の支払いを命じた。メーカーの責任は否定した。石綿被害で国の責任を認めた判決は大阪の石綿紡織工場元従業員による集団訴訟の1審であるが、元建設作業員による訴訟では初めて。
始関(しせき)正光裁判長は「国の規制措置は全体として実効性を欠き不十分」と指摘。メーカーや事業者について「何の責任も負わなくていいのかとの疑問があるが立法政策の問題。血税で被害の一部を補てんすることを踏まえ、立法府と関係当局に真剣な検討を望む」と述べた。
判決は、石綿の危険性が医学的に確立した時期について、国際労働機関が発がん性を明言した72年と認定。78年の専門家による国への報告書などから「79年には石綿関連疾患の患者が今後発生・増大することは容易に予見できた。遅くとも81年1月時点で防じんマスク着用を罰則付きで義務化するなどの規制を行う義務を負っていたのに怠った」と国の不作為を指摘した。
その上で、同年以降に屋内で作業に従事し肺がんや中皮腫になった元作業員158人について、遺族を含む計170人に賠償を認めた。このうち吹きつけ工については、国の庁舎工事での石綿吹きつけが禁止された後の74年以降を賠償対象とした。労働安全衛生法上、労働者に当たらないとされる個人事業主の請求は認めなかった。【鈴木一生】