働き方ネット大阪第12回つどい
「なんで私たち有期なん?」―パート・非常勤の働き方を考える―
弁護士 楠 晋一
2010年6月16日、エルおおさか708号室において、61名の参加者を得て、働き方ネット大阪第12回つどい、「なんで私たち有期なん?」―パート・非常勤の働き方を考える―が行われました。
毎月民法協の有期・パート・非常勤問題研究会に私も参加しているのですが、今回のつどいでは、河村学弁護士の報告や根本到大阪市立大学教授からの基調講演、パート・非常勤問題に携わる3名の方からのお話しを聞き、改めて有期(解雇付)雇用という働かせ方の問題点と有期労働研究会の中間とりまとめに対する幅広い視点からの分析を知ることができました。
河村弁護士も報告しておられましたが、解雇付雇用の問題は、単に解雇が予定されているだけにとどまりません(不安定雇用であるだけでも大いに問題ですが)。いつ解雇されるか分からないという漠然とした不安に怯える労働者に対して、使用者が「雇い止め」というこれ以上ない凶器をちらつかせることで、労働条件(例えば時給)の切り下げを行ったり、不更新条項付き契約へのサインを強要したり、労働者の権利行使(例えば有休取得)を抑圧したりするのです。解雇付雇用の推進派から、このような解雇を脅しに使うやり方に対しての考え方を私は未だに聞いたことがありません。
根本教授の講演からは、中間とりまとめが、解雇付雇用の削減に関心がなく、予測可能な紛争についてだけ解決基準を設け、あとはパート法同様に「均衡待遇」の名の下で行政に委ねるという問題点の多い内容であることが明らかになりました。また、諸外国の法令や日本の債権法改正案も引きながらあるべき規制の姿を示していただきました。
後半のリレートークでは、ハイリスクの金融商品について高めに設定されたノルマが達成できないと契約が更新されない日本郵政グループの事例、ベテラン学童保育員が業者作成の一般教養のペーパーテストで次々と契約を打ち切られた茨木市の学童保育員の事例、経費節減のために新卒を採用せずに契約社員で欠員を補い続けたために一般職の3分の1以上が契約社員で占められるようになったニッセイ同和損保の事例が紹介されました。
これらの話を聞きながら、今回紹介されなかったけれども、労働条件の悪い中で働き続けている解雇付雇用労働者はもっとたくさんいるはずで、運動を盛り上げる必要性と事案を掘り起こしていく必要性があると改めて感じました。
今年の夏には有期労働研究会の最終報告が出て、続いて労政審、国会へと議論の場は移っていきます。解雇付雇用をなくし、労働者が安心して働ける社会を実現するためには、これからの時期が非常に大切です。私も民法協の皆さんと共に頑張って参ります。
毎月第3金曜日には、民法協事務所で有期・パート・非常勤問題研究会を行っております。こちらにもたくさんの方の参加をお待ちしております。