自殺やうつ病:09年経済的損失2.7兆円 厚労省初調査

毎日新聞 2010年9月7日 

自殺やうつ病による経済的損失 厚生労働省は7日、自殺やうつ病での失業などによる09年の経済的損失額が推計で約2.7兆円に上るとする調査結果を発表した。長妻昭厚労相が政府の自殺総合対策会議に報告した。同様の調査は英国で実施され、その後の精神保健医療改革が自殺対策に大きな効果を上げている。日本での調査は初めて。

 調査は、英国の取り組みを知った長妻厚労相が指示し、国立社会保障・人口問題研究所の金子能宏(よしひろ)社会保障基礎理論研究部長らが実施した。

 損失額は、09年に15〜69歳で自殺した2万6539人が亡くならずに働き続けた場合に得られた生涯所得額と、03年のうつ病患者数の推計値をもとにした失業給付額や医療給付額など、計6項目の総額を加え推計した。

 調査結果によると、額は多かった順に▽自殺による生涯所得の損失額1兆9028億円▽うつ病による生活保護の支給額3046億円▽うつ病の医療費2971億円▽うつ病で休業したことによる賃金所得の損失額1094億円▽うつ病での自殺や休業で支給された労災補償給付額(労災年金を含む)456億円▽うつ病による求職者給付額187億円−−の計2兆6782億円だった。

 また、こうした損失がなければ今年度のGDP(国内総生産)が約1.7兆円引き上げられると試算した。

 英国は98年、日本よりも多岐にわたる調査で、精神疾患による経済的損失額を約4.6兆円と推計。薬物療法に抵抗感がある英国民の精神科受診率を向上させるため、心理療法の普及を実施した。その結果、97〜07年の10年間で人口10万人当たりの自殺者数(自殺率)を9.2人(95〜97年の平均値)から7.8人(05〜07年の平均値)へ15%減らしている。

 日本の自殺は12年連続で3万人を超え、自殺率は07年で24.4人。同年の英国の自殺率6.4人の約4倍に上る。【堀智行】

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