【朝日新聞】ライフ > 医療・健康 > 患者を生きる 2012.9.7
滋賀県の幼稚園教諭の女性(44)は「うつ病」と診断され、2007年6月から休職した。一時は食欲がわかず、家に閉じこもったが、10月になると、気分は少し上向いた。
「仕事に、早く戻りたいんです」。心療内科の主治医に訴えた。 「では、職場の人と話し合いを持ったらどうでしょう」と助言され、人事担当者と面談した。ところが、仕事のことを思い出すと、途端に具合が悪くなり、家で寝込む生活に逆戻りしてしまった。
気分の波が2、3カ月おきにあり、復職したいと思い立っては体調を崩す、「一進一退」が続いた。自宅で横になっていると、小学生と保育園児の2人の子どもは、不安げな顔で布団の中をのぞき込んでくる。夫は「そっとしておいたほうがいい病気なんやろ」と言
い、土日もなく働きに出て行った。
調子がいいときは、別人のように元気になる。08年春、かつて担任をした子どもたちが18歳になる記念に、同窓会を開こうと呼びかけた。集まった教え子17人は、当時の思い出を楽しそうに話した。「自分のやってきたことは間違っていなかった」と、意を強
くした。
以前のように外出し、買い物もできるようになってきた09年7月、幼稚園への復職に向け幼稚園長と面談した。ただ、2年の休職期間を考えると、元通りにすんなり戻れる自信はない。
「『リワーク施設』に通ってみませんか」。面談に同席した地元の保健師が切り出した。うつ病や気分障害などで休職している人が、病状の回復後にスムーズに復職し、再発を防ぐための学習をする場所だという。
園児たちの笑顔がまた見たくて、「これにかけてみよう」と、施設に通うことを決意。主治医も同意し「仕事のペース配分を、まず身につけておいてください」といった。頑張りすぎてしまう性格が、発症の引き金だと考えていたからだ。 紹介された「宇治おうばく病院」の復職トレーニング専門デイケア「バックアップセンター・きょうと」(京都府宇治市、現在は京都市に移転)を見学した。本を読んだり、パソコンで作業したりと、
机に向かう人たちの姿があった。