赤旗 私はこうして退職を強要された――NECリストラ 面談一問一答メモ

「しんぶん赤旗」2012年10月9日

 NECの1万人リストラで退職強要された男性が記録した面談の一問一答。「間合い以外はほぼ再現した」というメモの一端を紹介します。

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(写真省略)大リストラをすすめているNECの本社=東京港区

(写真)電機・情報ユニオンとNEC&関連労働者ネットワークのNEC本社前宣伝=3月14日、東京港区
 
1回目(45分間)
上司 今の職場で今のまま業務を続けてもらうのは難しい。特別転進(退職)を真剣に考えてほしい。

 男性 残って今の仕事を続けたい。

 (以上の会話の繰り返しが続く)

 □翌日、労組に相談する(役員が対応する)

 役員 今回の面談はアドバイスをもらう場だ。自分に何が足りないのか、どうしてほしいのか、どうすれば今の職場で仕事を続けられるのか聞いてみればいい。

2回目(90分間)
(労組の助言を参考に、仕事に対する熱意や決意などを伝える)

 男性 自分に足りないところがあるなら直すから教えてほしい。

 上司 この面談は自己研さんの場ではない。今の職場で仕事を続けてもらうのは難しい。

 男性 辞めません。

 上司 この面談はつまり一般的にいうリストラだ。(労使交渉の議事録らしいものを見せて)以上のことは組合とも合意している。

 男性 組合には(特別転進など)拒否すれば残れると聞いている。

 上司 残れると思うのは、あなたや組合の勝手だ。

 男性 労使交渉の議事録も、素直に読めば残れると読み取れる。

 上司 行間を読め。

 (略)

 男性 精神的に苦しいので、面談は今日限りでやめてください。

 上司 理解が得られるまで面談はやる。

面談嫌なら業務拒否だ
3回目(40分間)
男性 組合に確認しました。

 上司 どんなことだ。

 男性 グループ内公募、特別転進(退職)、残留の三つの道がある。

 上司 この職場で今まで通りの業務をお願いするのは難しい。組合の言うことは一般論としてはその通りだ。

 男性 何度も言うように、私は会社を辞めません。

 上司 今の職場で今まで通りの業務をお願いするのは難しい。

 (略)

 男性 特別転進には応募しません。会社も辞めません。この面談は苦痛なので、もうやめてほしい。

 上司 この面談は業務の一環としてやっている。業務を拒否したと伝えておく。

 男性 意味がわかりません。

 上司 普通のミーティングとしてもやっている。いやだと言うなら業務を拒否したととらえるしかない。

 男性 辞めろと言われることが普通のミーティングですか?

 上司 辞めろとは言ってない。今の職場で今まで通りの業務をお願いするのは難しい。

 男性 またその言葉ですか。辞めろと言っているのと同じじゃないですか。

 ◇面談の翌日、不安や不眠などの症状で初めて心療内科に行く。適応障害と診断される。

4回目(30分間)
男性 私は思い違いをしているのか? 私を辞めさせようとしていると思っている。

 上司 そうではない。

 男性 私が態度をはっきりすれば良いだけなのか? 迷っているから面談を続けているということか?

 上司 その通りだ。

 男性 特別転進施策には応募しない。(会社に)残る。

 上司 今の職場で今のまま仕事を続けてもらうのは難しい。

 男性 矛盾しているじゃないですか。今、はっきりと残ると言ったばかりですよ。

 上司 今の職場で今のまま仕事を続けてもらうのは難しい。

 男性 この面談で医者に通うことになってしまった。もう面談はやめてほしい。

 上司 この面談は法的に問題ない。当局からも問題ないと聞いている。

5回目(50分間)
上司 今の気持ち、考えを話してください。

 男性 辞めません。

 上司 今の職場で継続して仕事をしてもらうのは難しい。

 (しばらく沈黙)

 上司 今、辞めた方が得だ。次は指名解雇か整理解雇になるかもしれないぞ。

 (略)

 上司 今の職場で続けて仕事をするのは厳しい。それを踏まえた上でもう一度聞く。今の考えを話しなさい。残る覚悟があるのか。

 男性 覚悟はあります。だから今の職場に残ります。

 (仕事への熱意などを話す。2回目の面談で答えた内容と同じ)

 上司 こういう話をしているのに、なぜ熱意を語るのか?

 男性 NECが好きだからです。反省すべきは反省し、今以上の仕事をしたい。

 上司 好きだからというのは迷惑だ!

 (絶句する。略)

 男性 面談の回数が多過ぎる。もうやめてくれ。

 上司 会社からは何度やっても良いと言われている。法的にも問題ない。意思の確認をしているだけだ。

 男性 何回も辞めないと言っている。

 上司 (退職)施策の内容を理解していないようだ。理解するまで面談する。

 □労組に5回目の相談(最後となる)

 役員 会社に確認したが、面談を何回やっても良いと言うのは正確な表現でない。回数を特に設けていない、というのが正しい。(略)「今の職場に残れない」という表現は不適切だ。社長の言うように、各自反省して今までと同じやり方で仕事を続けていてはいけないという意味で、職場にいられないという意味ではないはずだ。

6回目(45分間)
男性 「今の職場で仕事ができない」と言うことについて、組合からは「今の職場にいられないという意味ではない」と聞いた。

 上司 それは違う。

 男性 どういう意味か?

 上司 今の職場で今まで通りの職務を続けてもらうことは厳しい。

 (これを繰り返す)

 男性 今の職場に残れないということか?

 上司 わからない、としか言えない。今のままだと会社にとって不幸だ。(この男性)にとっても不幸だ。

 男性 意味がわかりません。とにかく私は残ります。苦痛なので面談をやめてください。

 上司 施策の内容を理解していないようだ。また面談する。

医者が「面談中止を」と
7回目(30分間)
上司 体調はどうだ?

 男性 この面談で悪化している。医者からは面談をやめるなどストレスがたまらないようにする必要があると言われている。

 上司 面談は問題ない。

 男性 医者でもないのに問題ないと断言できるのか。この面談は苦痛なので即刻やめてもらいたい。

 (しばらく沈黙)

 上司 面談は業務確認としてやっている。

 男性 今までも業務について聞かれたことはない。何をもって業務確認と言うのか?

 (沈黙)

 上司 今の職場で今まで通りの仕事を続けることは難しい。

 男性 「難しい」とは、職場に残る可能性もゼロではない?

 上司 ゼロではないが、限りなくゼロに近い。

 男性 私は今の職場で今後も続けたい。反省すべきは反省し、能力スキルを高めるので今のまま頑張ります。

 上司 あなたの決意を聞く場ではない。

 男性 組合との合意と違うのではないか?

 上司 合意など知ったことではない。また面談する。

8回目(30分間)
上司 まず予定を聞く。特別転進施策に応募するか?

 男性 しません。

 上司 残りたいなら何を生かせるのか、どんな貢献ができるのか、覚悟はあるのか。具体的に言ってください。

 男性 今さら何を言っているのですか。私は何度も語ったのに、「決意をのべる場ではない」と、さんざん無視してきたのはそっちじゃないですか。

 上司 唐突だったかもしれないが、具体的に何が貢献できるか言ってください。

 男性 唐突どころか、何度も具体的に言ってきました。言いがかりとしか思えない。

 上司 具体的に述べ、残る覚悟もあると。

 男性 そうです。

 上司 わかった。また面談する。

 男性 残ると何度も言っているでしょ。もうやめてください。

 上司 理解できていないようだから、また面談する。以上だ。

9回目(15分間)
上司 君もこういう団体(上司が参加する経済産業省の外郭団体)に所属なり参加していたら、リストラにあわずにすんだのにね。

 男性 自慢話ですか? それに今、リストラと言いましたね。やっぱり退職強要じゃないですか。

 上司 いや、君は今の仕事を続けることは非常に厳しい。(急いで言葉を変えた)

 男性 私は辞めないし、今の職場に残って頑張ります。

 上司 意見は平行線だね。また面談する。

 男性 苦痛だから面談はやめてください。残ると言っています。

 上司 理解が得られていないようだ。

 男性 理解とはどういうことですか? (退職の)施策に応募することですか?

 上司 私がこれ以上、言えないことはわかるだろう?

 男性 私は応募しません。残ります。面談は苦痛だから、もうやめてください。

 上司 そういう訳にはいかない。確認のため、また面談する。

辞めないと100回言った
10回目(60分間)
上司 今の職場で今のままの仕事を続けてもらうのは難しい。

 男性 もう何度も聞きました。100回くらい聞いています。私も辞めないと100回くらい言っています。病気にもなり、(面談は)苦痛です。

 上司 面談は業務の一環としてやっている。合法だし、当局も問題ないと言っている。

 男性 本当ですか? 3回以上の面談は違法だとして労働基準監督署からNECに勧告があったと聞いている。

 上司 ビルの外でビラを配っている人たちの主張ですね。左寄りか、共産党の人たちのことですね。うちとは関係ありません。

 男性 人をバカにしたようなことを言って良いのですか?

 上司 じゃあ、あのビラを配っている人たちに相談したらいい。

 男性 いざとなったらそうします。

11回目(60分間)
▽上司と、その上役の計2人が面談相手

 上役 残れないよ。残れると思った?

 男性 可能性はあると思っていました。あいまいな表現だったから。

 上司 今の職場で今のまま仕事を続けてもらうのは難しい。

 上役 表現を柔らかくしているだけで、ここにはいられないよ。

 (沈黙。本人はうつむいていた)

 上役 どうした?

 (涙が流れていた)

 上役 繰り返しになるが、今の職場にはいられないよ。

 男性 (今の職場には)いられないということですか?

 上役 そういうことだ。営業かな。でも、君は営業向きじゃないよなあ。

 男性 では出向ということですか?

 上役 わからないし、答える必要ある? ないよね。

 男性 私に自殺しろと言うのですか? 何回も面談して追い込み、病気にまでさせておいて、さらに追い討ちをかけるんですか? もう自殺するしかないじゃないですか。

 上役 やめなさい、自殺は。家族が悲しむよ。

 (しばらくたつ)

 上役 落ち着いたか?

 男性 はい。どうにか…。

 上司 (上役に対して)面談は今日で終わりにして良いですか?

 上役 人事に確認してもう1回やるか…。

 男性 まだやるんですか? これ以上、追い込まないでください。苦しめないでください!

 上役 わかった、わかった。面談は今日で最後だ、終わりだ。

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