(Research)広島県内公務員の残業、年1000時間以上16人/広島県

2013/01/12 朝日新聞 朝刊

 Research(リサーチ〈調べる〉)

 全国各地で、地方公務員の長時間の残業と、高額の時間外手当が問題になっている。県と県内23市町を調べると、残業時間が1千時間以上の職員が3市に計16人いた。うち14人は広島市。現状を探った。

 調査は、管理職を除いた一般行政職を対象に(1)2011年度の残業時間が年間1千時間以上の職員数(2)労働基準法で上限とされる360時間以上の職員数(3)時間外手当(残業代)の額――をアンケートで尋ねた。

 残業が1千時間以上にのぼったのは広島市の14人のほか廿日市、尾道両市の各1人。360時間以上は安芸高田市、安芸太田町、世羅町を除く21自治体の1323人だった=表。

 年間の残業代が「400万円以上」は広島市で6人。「300万円以上」が同市22人、廿日市市1人だった。「200万円以上」は9自治体で152人。広島市105人、廿日市市18人、県8人などだ。

 1千時間以上の残業の理由は何か。

 突出して多かった広島市。14人の所属の内訳は人事課4人、法務課4人、こども・家庭支援課2人などだった。

 人事課は、年度末に向けた人事異動案の作成や事務処理などが残業の理由という。最長は係長級の男性職員で、年間1346時間。うちピークの3月は260時間だった。土日も含めて1日も休まず、午前8時半から翌日午前0時を過ぎるまで働いた計算だ。

 政氏昭夫課長は「職員数を抑制していることもあり、繁忙期などに結果的に残業が増えた」と話す。

 法務課は、条例の立案審査や訴訟対応が主な理由とし、「突発的な事案に対応するため、残業が多くなる職員がいる」という。こども・家庭支援課は「ボランティアが小中学生の相談に応じる青少年支援メンター制度など、需要が増えて担当職員の負担が大きくなった」としている。

 廿日市市は「新規開発したシステムに対応するため、情報推進課の職員の残業が増えた」と説明。尾道市は経済産業省に研修派遣されている職員だった。

 ●「臨時に必要」上限なし 月80時間、過労死の危険

 労働基準法は「1日8時間、週40時間」を超えて残業させる場合、同法36条に基づく「36協定」を労働者側と結ぶよう企業に求めている。年間の残業時間も特別な事情がない限り360時間を上限としている。

 一方、公務員については同法33条3項で「公務のために臨時の必要がある場合」の残業を認め、残業時間の上限は定めていない。

 厚生労働省は1カ月80時間以上の残業を「過労死の危険ライン」としている。年間1千時間以上の職員は過労死ラインを超す残業を毎月していることになる。

 労働問題に詳しい関西大学の森岡孝二教授は「通常業務なのに『臨時』として制限なく残業させるのはおかしい」と批判する。

 長時間残業は人件費増にもなる。今回の調査で残業代の最高額は、広島市人事課の係長級職員の447万円。11年の県内一般労働者の給与総額平均の473万と同水準だ。市によるとタイムカードなどはなく、自己申告に基づいて支払われている。

 長時間残業が問題となった埼玉県は、2月からタイムカードを導入する予定だ。(奥田貫)

 ◆キーワード
<自治体の長時間残業問題> 埼玉県の職員が2011年度の1年間で2017時間残業し、740万円の残業代を受け取っていたことが昨年発覚、県民らから批判された。各地の自治体でも長時間残業が問題化し、同年度に1千時間以上残業した職員は同県で20人、さいたま市で79人、横浜市で17人、相模原市で14人、姫路市で12人いたことが分かっている。

 ■2011年度の残業時間が360時間以上の職員数
自治体名  人数
広島市    540
県         231
東広島市   154
廿日市市   103
福山市     99
三原市     40
呉市       29
庄原市     20
尾道市     20
北広島町    20
府中町     17
江田島市    11
大竹市       8
三次市      8
大崎上島町   6
府中市      4
竹原市      3
海田町      3
熊野町      3
坂町        3
神石高原町    1
安芸高田市    0
安芸太田町    0
世羅町       0
計       1323

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