インタビューQ&A 就職の「質」は悪化の一途−−森岡孝二・関西大経済学部教授

毎日新聞 2013/03/05 

現代の就活はどれほど学生を追い詰めるのか。森岡教授に聞いた。

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 −−今年の就活は、景気の底打ち感が広がって採用の門戸が広がるという見方がありますが。

 ◆実態と乖離(かいり)しています。大企業は厳選採用のまま。非正規雇用の増加や残業代未払い、パワーハラスメント(パワハラ)などで悪名高い「ブラック企業」の存在など、雇用環境は悪化の一途です。内定率などの数字では見えてきませんが、就職の「質」が悪化しているのです。

 −−企業の選考方法に問題があるのでしょうか。

 ◆そうです。囲い込みのためか、同じ企業に10回以上面接を重ねた学生がいました。日程が重なった他の企業の面接を辞退した後に、面接を受けた企業に落ちたら悲劇です。深刻な雇用環境下で就活し続ければ、誰でもストレスによるうつ病や自殺のリスクがあります。

 −−学生たちはなぜ追い込まれるのでしょうか。

 ◆アルバイトなどを通じて、大半の学生は社会を覆う閉塞(へいそく)感を感じ、多くの学生が「転職でキャリアアップ」より「定年まで同じ会社に」と考えています。終身雇用が崩壊しても会社にしがみつかざるを得ない現状が、学生をさらに追い込みます。

 −−社会は何をすべきでしょうか。

 ◆まず、みんながまともな働き方をすべきです。サービス残業を解消すれば、数百万人の雇用が生まれ、それだけで雇用環境はかなり改善します。もっとも、それでも全員が正社員になるのは難しい。非正規雇用で働くことになっても生活できる水準まで賃金を底上げするのも急務です。

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