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しんぶん赤旗 2013/8/24
ルネサスで課長職から降格された男性は、8回もの退職強要を受けました。その“面談”での記録です。
くり返し「早期退職を」
【内示】
6月下旬
写真
(写真)ルネサスでの退職強要の“面談”をやめさせるよう助言・指導を求めて神奈川労働局に申し入れする電機ユニオンの森英一書記長(左から2人目)、日本共産党国会議員団南関東ブロック事務所の大森猛所長(左端)ら=21日、横浜市内
上司 8月1日付で総合職に降格になります。8月1日以降の処遇は決まっていません。早期退職優遇制度の対象者になります。6月25日から28日にキャリアセミナーがあります。これは必須です。あなたの受講日時は別途連絡がありますから、受講してください。
◇6月下旬に、業務命令によりキャリアセミナーを受講。
【1回目】
7月上旬35分間
上司 会社は、予算は達成していると対外的には説明しているが実際は厳しい。キャッシュも不足している。構造改革の必要性がある。キャリアセミナーは受講したか、内容はどうだったか?
男性 特に有用な内容はなかった。
上司 早期退職制度の利用は考えているか?
男性 考えてはいない。
上司 今回降格になるあなたは早期退職優遇制度の利用をまじめに考えてほしい。8月1日以降のポジションは決まっていない。残っても仕事はないから、視野を広く持ちキャリア相談をするように。
【2回目】
7月上旬80分間
上司 キャリア相談は受けたか?
男性 受けていない。
上司 広い視野で調べてほしい。最後は自分で決めてくれればよいが、早期退職者が集まらなかったときの逃げ道は必要だ。
男性 以前の早期退職者募集でキャリア相談にいったら、そこから先はもうレールが敷かれていた話を聞いていたので行っていない。
上司 残りたいとの強い意思はわかるが、それだけでは難しい。会社はそこまで追い詰められている。今回主任に降格になり(早期退職の)対象者になった。それだけ厳しい状況におかれている。必ずキャリア相談するように。
【3回目】
7月中旬20分間
男性 実はこのような件に詳しい方に相談にのっていただいています。その方から録音を許してもらうように話してみたらとアドバイスを受けた。
上司 私の権限で禁止はできないが、やめてほしい。キャリア相談はいったのか、どのような内容だったか。
男性 再就職支援制度の説明であり、具体的な情報はなかった。
上司 それでは何の判断もできない。そういうことなら、考え(残留希望)は変わらないね。
男性 はい。
上司 次の処遇は何も決まっていないので、どんな仕事が用意されるのかまったくわからないが、いいか?
男性 その件なら前から聞いているし、その上での結論だ。
上司 わかった。事業部の人事権の責任は事業部長にありますから、もしかしたら事業部長とお話ししていただくかもしれない。
「整理解雇ある」と脅し
【4回目】
7月下旬50分間
上司 9月末に事業上解雇(整理解雇)をすることもありうる。人員削減を完遂しなければ、産業革新機構からの融資も受けられず会社は倒産する。そうなったら社員が全員路頭に迷うし、お客様にも迷惑をかけることになる。これらのことを理解してもらったうえで話をしたい。
あなたももうじき50歳を超える。そうなると再就職は大変厳しい。いまのうちに判断するのがいいと思う。解雇になるとキャリア相談も受けられない。もう一度、自分を見つめ直して考えてほしい。
会社はスリム化が必要だ。制度利用者は現在のところ想定の20%程度だ。9月に事業上解雇になれば降格者は対象になる可能性が高い。もう一度考えてほしい、何があなたにとって一番、幸せか。
◇男性は一貫して残留希望の意思を表示。
【5回目】
7月下旬30分間
上司 事業部内の集計では今のところ(早期退職支援)制度利用者は見込みの40%程度だ。このままではおそらく事業上解雇はあるかもしれない。このような状況なので、今からでもキャリア相談をつかい、次を探してほしい。
男性 以前からお話ししているように考えは変わりません。
上司 最後に決めるのはあなただ。でもそれは8月まで。事業上解雇が始まれば状況が変わる。いまからでも遅くはないので、よく考えてほしい。残っても今の仕事を続けるのは難しい。
【6回目】
8月上旬40分間
上司 全社の集計では今のところ制度利用者は見込みの40%程度だ。業績も事業部では黒字だが全社では赤字、産業革新機構の融資を受けるために3500人の削減は必須だ。
事業上解雇の実施は避けられないと思う。あなたが解雇される可能性も高いと思う。会社はスリム化して、健全な体制にしようと思っている。
男性 …。
上司 今日以降は引き継ぎのみやってもらう。次の仕事はない。新しい道を考えてほしい。今のプロジェクトもはずれてもらう。
男性 この措置は追い出し部屋であると思う。違法だと考える。会社は社員に仕事を用意する責任がある。
上司 今の状況ではあなたに仕事は与えられない。キャリア相談をもう一度受け考えてほしい。
「残って尽力」きっぱり
【7回目】
8月上旬50分間
上司 申込者は大きく伸びてはいない。半分にも満たない。最悪のことが実施される可能性は高い。応募状況をみながら、26日の週に事業上解雇の申し入れを行う。あなたの今の考えをうかがいたい。
男性 前からいっている通り、会社に残り、復活のために力を尽くしたい。
上司 会社はスリムな状態になる。スコープ(視野、照準)の中にあなたはいない。これが会社の認識だ。収益の出ないビジネスは切り捨てるし、仕事も減らす。成果主義もいっそう進める。給与も下がるだろう。次回の優遇制度の条件はもっと悪くなる。ぜひ現時点で考えてほしい。休み明けにもう一度面談する。仕事は準備できない。もう一度検討してアクションを打ってほしい。
【8回目】
8月上旬10分間
上司 事業上解雇であなたが対象になる可能性はきわめて高い。部内の降格者の多くが退職届をだしている。
【上司連名メール】
同日朝
会社としては存続のため、不退転の決意で今回の早期退職を完遂する覚悟である旨は聞いていただいた通りです。募集期間に想定人数に達しなかった場合には、ご本人の意思に反してでも事業上解雇に踏み切る状況にあります。
事業上解雇の場合、今回の優遇制度と比べて、かなり不利な条件になってしまいます。現在の応募状況を考えると、かなりの確率でやむを得ず事業上解雇に踏み切ることが予想されます。
つきましては大変恐縮ではございますが、今一度早期退職制度への応募について、じっくり再検討いただきたいと思っています。理不尽なお願いであることは重々承知しておりますが、会社にとってもご本人にとっても最善の方法での決着を望んでいます。夏休み期間中、熟考いただき、連休明けにご意思を再確認させていただきたく重ねてよろしくお願い致します。
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退職勧奨の繰り返しは違法です
退職勧奨を繰り返すことは違法です。1980年7月10日に出された最高裁判決は、次のように指摘しています。
「ことさらに多数回、長期にわたる退職勧奨は、いたずらに被勧奨者の不安感を増し、不当に退職を強要する結果となる可能性が高く、退職勧奨は、被勧奨者の家庭の状況、名誉感情等に十分配慮すべきであり、勧奨者の数、優遇措置の有無等を総合的に勘案し、全体として被勧奨者の自由な意思決定が妨げられる状況であった場合には、当該退職勧奨行為は違法な権利侵害となる」
「はね返す4カ条」あります
電機・情報ユニオンは、「リストラ・退職強要をはね返す4カ条」をつくって、労働者に呼びかけています。
(1)「辞めません」とはっきり言う。「辞めません」の一言が、あなたと家族を守ります。
(2)退職強要にはきっぱり抗議を。会社が強引に「同意」を迫ってきたら「やめてください」とキッパリ言いましょう。
(3)家族は首切りに反対です。「会社は大変」と言われたら「私の生活も大変」と答えましょう。
(4)ルネサス懇談会、電機・情報ユニオン、労働弁護士などに相談を。困ったときは、1人で悩まず相談し、知恵と力を借りましょう。