苦闘する若者に突破口を

共同通信 2013年07月26日

ブラック企業を告発する今野晴貴さん

就職難の若者を正社員として大量採用し、猛烈に酷使して放り出す「ブラック企業」の違法性を告発する若手論客として、存在感を増している。「特殊な企業の特殊事例とみるのではなく、日本の社会全体の問題と理解することが大切です。国を挙げて解決に取り組む必要がある」と訴える。

 高校時代に在日韓国人の同級生と接し、差別や偏見と闘う法律家に憧れて中央大法学 部に進学。従軍慰安婦訴訟の支援などに従事する一方、仕事を軸に社会全体を学べる労 働法を専攻した。

 ゼミ仲間とNPO法人「POSSE(ポッセ)」を立ち上げたのは、在学中の200 6年のこと。産業界は構造改革のさなかで、非正規雇用が急増していた。企業の都合で就労構造を変えておいて、正社員になれない若者を「甘えている」と見下す大人に怒りを覚え、若者向けの労働相談に乗りだした。

 IT企業の社員が悲惨な境遇を嘆く隠語として「ブラック」が登場したのも同じころ。利益至上主義の下、過労死や自殺が多発する長時間労働が流通や外食などの業界に広がり、急成長する新興企業の暗部に定着した。

 正社員志向につけこんで集めた新人を職場に隷属させ「代わりはいくらでもいる」と解雇をちらつかせて重労働に追い込むのが常とう手段という。「就職活動では人事担当 者の言葉に惑わされず、離職率など客観データを確認する。入社してしまったら、就業時間と勤務内容を記録しておく。それでかなり闘えます」

 昨年の著書「ブラック企業」(文春新書)が話題となり、相談も年間千件を超す勢い という。「部外者が命名したフリーターと違い、ブラック企業は苦闘する当事者が生ん だ言葉。その潜在力を解決につなげるための突破口づくりが、僕たちの役目です」

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