毎日新聞 2013年10月25日 12時10分(最終更新 10月25日 18時59分)
JR西日本に勤務していた男性(当時28歳)がうつ病を発症して自殺したのは恒常的な長時間労働が原因だとして、男性の妻と両親が同社を相手取り、約1億9000万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。25日に第1回口頭弁論があり、JR西は請求棄却を求めた。
訴状によると、男性は大学院修了後の2009年4月に入社。11年6月以降、大阪保安システム工事所に所属し、ポイントや信号機システムなどの保安業務を担当していたが、超過労働が原因でうつ病を発症し、昨年10月2日、勤務先近くのマンションから飛び降り自殺した。
原告側は訴状で、男性の時間外労働は、パソコンの稼働時間から、自殺直前の昨年9月は160時間を超えていたと主張。「昼夜連続勤務や休日出勤で250時間に上った月もあり、常軌を逸するものだった」としている。保安業務は、乗客の安全確保のためミスが許されない責任の重い仕事だったという。タイムカードなどで労働時間を適正に把握しなかったなどとして、JR西に注意義務違反や雇用契約上の安全配慮義務違反があったと訴えている。
男性の自殺について、尼崎労働基準監督署は今年8月、業務上の死亡と判断し、労災認定している。【内田幸一】
JR西の代理人弁護士によると、長時間労働と自殺の因果関係や同社の責任は大筋で認める方向だという。
◇過労自殺…昨年度認定は93人
厚生労働省によると、仕事上のストレスが原因でうつ病などの精神疾患を発症し、労災認定された人は、昨年度1年間に475人となり、過去最多を記録した。このうち93人が未遂を含めて過労自殺と認定されており、長時間労働も一因とされている。
過労死や過労自殺を巡っては、「過労死防止基本法」の制定を目指す動きもある。遺族らが中心となり、制定に賛同する100万人分の署名を集めるなど活動を続けてきた。今夏には国会で超党派の議員連盟が発足。今月には、国による防止対策の責務や事業主の努力義務を課すなどとする法案の骨子が固まり、根絶に向けた機運が高まっている。【服部陽】