自殺発生率20%以上減 男性と高齢者、対策導入で

2013年10月10日 共同通信

 国立精神・神経医療研究センター(東京)などの研究チームが2006年7月から3年半にわたり、自殺対策プログラムを東北と九州の一部地域で実施し、自殺発生率が近接地域と比べて男性と高齢者で20%以上減ったとする研究結果をまとめた。9日付の米科学誌(プロスワン)に掲載された。

 研究代表者の大野裕・同センター認知行動療法センター長は「自殺対策を科学的に検証した意味は大きい」としている。

 研究は青森、秋田、岩手、宮崎、鹿児島5県のうち、自殺による年間死亡率が人口10万人当たり30人以上と高い計8自治体で実施。行政の協力を得て自殺対策プログラムを導入し、自殺による死亡と自殺未遂による入院を合わせた自殺発生率が、近接自治体と比べ変化したか調べた。

 実施した自殺対策プログラムは▽イベントでの普及啓発▽健診などを活用した自殺リスクが高い人の把握とフォロー▽自殺者遺族の支援▽精神疾患がある人への訪問、相談―などを組み合わせたもので、計約80項目。

 自殺発生率の変化は8自治体合計で算出した。3年半の平均を地域の人口減少率なども加味して統計的に解析した結果、近接自治体の自殺発生率に対し、プログラム実施自治体では男性で約23%、65歳以上の高齢者で約24%減少していた。

 一方、女性や若年層では変化がみられなかった。研究チームは「理由はまだ分析できていないが、現行の対策がこれらの層には伝わりにくいのではないか」としている。

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