石綿労災訴訟:不認定の処分取り消し請求を棄却 神戸地裁

毎日新聞 2013年11月05日 20時58分

 川崎重工業神戸工場(神戸市)の造船所で働いていた元社員、丸本佐開(さかい)さん(死亡時66歳)=同市西区=が肺がんで死亡したのはアスベスト(石綿)が原因として、妻津枝美さん(70)が労災不認定の処分取り消しを求めた訴訟で、神戸地裁は5日、請求を棄却した。工藤涼二裁判長は「石綿にさらされる機会は10年以上あったが、(認定基準の一つの)胸膜プラークが認められない」と述べた。原告側は控訴する方針。

 判決では、丸本さんは1967〜94年、船内の溶接作業などに従事し、2003年、肺がんで死亡した。遺族が遺族補償給付を申請したが、06年、神戸東労基署は不支給とした。

 原告側は「同時期に同じ工場で働いた従業員の少なくとも19人が石綿が原因の労災認定を受けた」と主張したが、判決は「丸本さんと同様の作業に従事したか明らかでない」などとして退けた。

 判決後に記者会見した津枝美さんは「死亡時に石綿の存在を知らず救済から漏れている人がいる。認定基準を見直すよう国に訴えていきたい」と話した。【椋田佳代】

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