アベノミクス正念場 指標改善も家計減収

産経新聞 2014年3月1日

主な1月の経済指標(写真:産経新聞)

 政府が28日発表した1月の物価、生産、雇用統計は、安倍政権の経済政策「アベノミクス」を背景に回復基調が鮮明となった。消費者物価指数は8カ月連続で上昇し、鉱工業生産指数は平成20年のリーマン・ショック時の水準まで回復。有効求人倍率も14カ月連続で改善した。景気回復に加え、消費税増税前の駆け込み需要が反映された。ただ、家計収入は減少し、4月以降は消費税増税の反動も見込まれる。景気の本格回復には、賃上げや成長戦略が欠かせない。(大柳聡庸)

 ◆脱デフレへ前進

 28日午後、東京・秋葉原にある家電量販店のテレビ売り場。平日の昼間にもかかわらず、スーツ姿のサラリーマンなどでにぎわう。売り場の店員は「同じサイズでも、少し高めで画質の良い商品を買うお客が増えている」と説明する。

 景気が回復するとモノが売れるようになり、価格も上昇基調となる。総務省が28日発表した1月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は、前年同月比で1・3%上昇した。

 ルームエアコン(前年同月比19・8%上昇)やデスクトップパソコン(同15・4%上昇)などが大きく値上がりし、テレビも3・7%プラスと3カ月連続で上昇。値上がり品目は279(前月は267)に広がり、脱デフレに向け前進していることが示された。

 ◆賃上げ実現必須

 生産も回復している。経済産業省が発表した1月の鉱工業生産指数速報は前月比4・0%上昇し、5年3カ月ぶりの高水準だ。景気回復を受け、雇用環境も改善。厚生労働省が発表した1月の有効求人倍率(季節調整値)は、前月比0・01ポイント上昇の1・04倍だった。

 ただ、物価上昇は円安に伴う輸入品の値上がりや、消費税増税前の駆け込み需要の影響も大きい。生産の増加は、駆け込み需要に対応するためメーカーが自動車などの在庫を増やしているのが主因で、増税後の反動が懸念される。

 総務省が発表した1月の2人以上世帯の家計調査によると、実収入は物価変動を除く実質で前年同月比0・6%減と4カ月連続で減少。収入が増えず消費税増税で物価だけが上昇すれば個人消費を冷え込ませかねず、今春闘を含めた賃上げの実現が持続的な景気回復には不可欠となる。

 ◆消費増税反動も

 市場では「政府の経済対策が、消費税増税の悪影響を相殺する」(野村証券の木下智夫チーフエコノミスト)との見方は多い。野村証券の試算によれば消費税増税が日本の26年度の実質GDP(国内総生産)成長率を低下させる効果は0・68ポイント。これに対し、政府の経済政策がもたらす成長率の押し上げ効果は0・59ポイントだ。消費税増税後の景気回復を軌道に乗せられるのか。アベノミクスの真価が問われる。

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