過労死防止「国の責務」 自民調査会 法骨格案を了承

2014年3月20日(木)京都新聞朝刊 

自民党の過労死対策法の骨格案
◇実態の調査研究
◇国民への啓発
◇過労死の恐れのある人や家族が相談できる体制の整備
◇民間団体の活動への支援

 自民党雇用問題調査会のワーキングチームは19日、東京都内で会合を開き、過労死や過労自殺を防止する法律の骨格案を提示し、大筋で了承された。国が対策実施の責務を負うと明確にし、過労死を防ぐための大綱を作ることが柱。チームは今後、最終的な内容を詰めて法案を作成する。

 今回の法律は長時間労働などに対する規制策や罰則を定めるものではなく、国の責任で社会から過労死をなくすことを理念として明らかにすることが狙いだ。

 過労死を防ぐ法律は超党派の国会議員連盟(議連)が議員立法での成立を目指しており、昨年末に議連の野党議員が先行して「過労死等防止基本法案」を国会に提出している。自民党は議連とも調整し今国会での成立を目指す。

 骨格案では国による対策として?過労死の実態の調査研究?国民への啓発?過労死の恐れのある人や家族が相談できる体制の整備?民間団体の活動への支援 ― を列挙。地方自治体や事業主に対し、対策に協力することを努力義務とした。

 国には大綱策定のほか、過労死や過労自殺の報告書を毎年国会に提出するよう義務付けた。対策を進めるための協議会を厚生労働省に設置し遺族も加わる。「過労死を間近で見てきた人の意見は貴重」として遺族側が求めていた。ワーキングチームの事務局長を務める馳浩衆院議員は「労災認定される過労死事案は氷山の一角だ。まずは調査研究を行い、必要な措置を検討していく」と話した。

 チームは2月にいったん原案を示したが、過労死の実態調査や研究を主な目的とする内容にとどまった。遺族らから「実効性を高めるため、国の責任をはっきりさせてほしい」との声が出たため原案を修正した。

 理念先行、実効性が鍵

《解説》自民党のワーキングチームによる過労死や過労自殺を防止する法律の骨格案は、「理念」先行だ。命を奪いかねない過重労働を抑制するためには、骨格案で策定を義務付けられた大綱作りを通じ、国がどこまで実効性を打ち出せるかが鍵になる。

 骨格案では、過労死の実態の調査研究を国が取るべき主な対策に挙げた。国が把握する過労死の数字はごく一部にすぎないとの指摘は根強い。自民党の会合でも、トラック運転手が過重労働の末に事故を起こし死亡したケースなども含めるべきだとの意見も出た。

 調査研究は有効な対策につながるが、長時間労働解消など具体的成果が見えないと、お題目だけで終わってしまう恐れもある。

 過労死は国際的にも問題視されてきたが、いまだ後を絶たない。過酷な労働を強いる「プラック企業」など雇用環境の悪化が問題になっている。若い世代の過労自殺が目立つという指摘もある。

 対策の一つに、過労死防止の重要性についての国民への啓発も挙げられた。過労死の恐れのある人を未然に救うため、心身をむしばむような働き過ぎを許容しないとの雰囲気づくりも重要だろう。

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