キャリアナビ フリーランスという選択

読売新聞 2014年08月05日

個人の力を実感、収入の安定カギ

研修内容について打ち合わせする松本さん(東京都千代田区のリクルートマネジメントソリューションズで)=前田尚紀撮影(省略)

 企業に所属せず、個人事業主として仕事をする「フリーランス」という働き方を選ぶ女性が目立っている。仕事や収入は不安定だが、自分の力を実感でき、働く時間を調整しやすいことが魅力だ。

 松本あずみさん(41)は2008年からフリーランスの人材開発トレーナーとして働いている。前職は、大手スーパーの社員研修を企画する教育課長。安定はしていたが、「もっと仕事を通して成長したい」と考え始めた時、人材育成・研修業「リクルートマネジメントソリューションズ」(東京)がフリーランスのトレーナーを募集していると聞き、「新しい仕事のチャンスだ」と転身した。

 1年単位の専属契約を結び、自分の実力と担当した研修の数に応じて報酬が決まる。12年に長男(2)を出産した前後は仕事をしなかったので収入はゼロ。だが、研修の受講者に「よかったです」と言われると、「会社でなく、私個人が評価された」と実感できるのがフリーランスの良さだという。

 東京都の氏家祥美さん(42)はフリーランスのファイナンシャルプランナーとして働く。

 旅行会社を結婚退職して長男と次男を出産。03年にファイナンシャルプランナーの資格を取得し、同業の女性3人と起業して働き始めた。だが、夜や週末の仕事が増えて子どもと過ごす時間がなくなったため、10年に退社して独立。知人の紹介や、自分で開設したホームページを通して相談の仕事を受けている。午後6時には帰宅できるようになり、仕事をやりくりして、平日の小学校の保護者会にも出席できるようになったという。

時間調整も自由

 女性の働き方に詳しい独立行政法人「労働政策研究・研修機構」研究員の周燕飛さんは、「高学歴化して仕事で稼げるようになった女性にとって、働く時間を調整したり自宅で仕事をしたりできるフリーランスは、子育てと両立しやすい便利な働き方だ」と指摘。一方、人件費を減らしたい企業は仕事をフリーランスなど外部に発注するようになっているため、「これからもフリーランスとして働く女性は増える」と予想している。

 時間の自由がきく反面、一般にフリーランスは収入を安定させるのが難しい。

 地方でフリーランスの広告クリエイターとして働く女性(45)は、「イベント期間の3か月間のみという契約も多い。仕事が少ない時の年収は、会社員時代の4分の1」とこぼす。また、会社員の時には上司や先輩という支えがあったが、今は「責任者は自分」で重圧も強くなったという。

 フリーランスは自分で仕事を探さないといけない。会社員の間にスキルを高め、人脈を広げることが必要。

 フリーランスの女性向けコミュニティーサイト「リズムーン」を運営する小野梨奈さんは、「収入や貯金を確保するなど、なるべくリスクを減らした上で始めてほしい。個人事業主なので、会社員向けの厚生年金には加入できず、自分で確定申告をしなければならない。健康保険の制度も会社員とは違う。こうした点も覚悟して」とアドバイスする。

 知人を通して仕事を依頼されることも多いため、交流も活発に行われている。

 看護師の新谷雅子さん(35)は12年、一般社団法人日本フリーランスウーマン協会(大阪市)を設立。ここで知り合ったインストラクターが共同でセミナーを開くなど、新事業が生まれている。

 放送作家、板橋めぐみさんが昨年9月に設立したグループは「国際女性メディアバンク」。ディレクターやアナウンサーなど女性17人が参加している。(吉田尚大)

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