残業しないと年収ダウン? 労働時間が長過ぎる日本人

マイナビニュース 2014年8月24日

週に何時間残業をしていますか?
日本の労働時間は世界屈指の長さ

日本の労働時間の長さは世界でも屈指。決してよい意味ではなく、健康を害するまでに働かき続けている人が多いのです。

日本は1990年代に年間労働時間を1800時間とすることを国際公約に掲げ、実際に2000時間から徐々に減り、現在は1750時間程度になっています。もっとも、これは統計上の数値であって、実際にはパート等の短時間労働が広がったことや、統計に反映されていないサービス残業があるので、フルタイム労働者の実労働時間で見れば、やはりまだ長時間労働が問題となるのです。

というのも、25〜39歳の20%は週60時間以上(年3000時間〜)も働いているからです。過労死ラインは月の残業時間が80時間ですから、これを超えて働いている人が5人に1人というのは,やはり由々しき事態なわけです。

残業という概念自体をなくしてしまう「残業代ゼロ法案」

長時間労働が是正されないなか、残業代を廃止しようという新しい労働時間規制が議論されています。この「残業代ゼロ法案」は第一次安倍政権のときにも議論され、参院選を控えていたこともあり結局は見送られたのですが、また議論が再燃しています。

通常、法定労働時間を超えた分は残業代が支払われ、時間外労働には割り増し賃金が適用されます。ところが新しい労働時間規制では、労働時間に応じて賃金を払うのではなく、成果に応じて賃金を支払うこととし、残業という概念自体をなくしてしまおうというのです。

労働時間で賃金を支払うタイプの仕事と、それにはふさわしくない仕事のタイプがあるのは事実ですが、すべての仕事から労働時間概念をとってしまうと、単に年収が下がるだけの人がでてくる懸念があります。この制度が適用されるのは一定の年収以上の労働者ということになっていますが、年収基準が引き下げられると、相当数の人々の年収ダウンになってしまうのです。

「残業」をなくすことは、健康被害にもつながる?

さらには、残業代を支払わなくてよくなった雇用主がもっと長く働かせようとするならば、年収ダウンだけではなく健康被害という別の問題もでてきます。あまりに長い労働時間は過労死を招いたり、健康被害を引き起こしたりするわけですが、そこまでいかずとも仕事以外の活動(子育て、地域活動、趣味)を犠牲にすることを余儀なくされます。

EUでは強制休息時間という制度があり、仕事終了時点から11時間は休息を取らなくてはなりません。もし23時まで仕事をしたならば,翌日の出社時間は朝10時となります。通勤時間、食事、家事、睡眠を考えれば、11時間の休息は最低限であることが理解されます。

とくに男性の長時間労働は、結局のところ家族的責任を女性がより多く負うことにつながりますから、男女の公平な分担の観点からも,労働時間の短縮は重要な課題です。時間外労働の上限は均等法が97年に改正される以前は、男性は年360時間、女性は年150時間でした。それが現在は男女ともに年360時間となり、未就学児の育児がある場合は、男女ともに年150時間となっています。

家族的責任との調和を考えれば、男女ともに年120時間ぐらいまで引き下げることが、21世紀の働き方としてはふさわしいのではないでしょうか。

(文/三浦まり)

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