大学生「就活自殺」7年で200人超 思うように内定得られず追い詰められ… 専門家「解決には雇用環境の改善必要」

http://www.sankei.com/west/news/150103/wst1501030060-n1.html
産経新聞 2015.1.3

 就職活動がうまくいかない大学生が精神的に追い詰められて死を選ぶ「就活自殺」が、平成25年までの7年間で218人に上ることが、警察庁のまとめで分かった。各大学は最悪の事態を防ごうと対策に乗り出しているが、自殺者数は、雇用環境と密接に関係するともいわれており、専門家は「解決には、雇用環境を改善することが先決だ」と指摘している。

 警察庁によると、自殺原因の詳細な分析を始めた19年以降、自殺した大学生は3516人。そのうち遺書などの記述から「就活の失敗」が原因とみられるのは218人だった。雇用環境との関連を証明するように、景気が回復したとされる25年は、前年より17人減少した。

 各地の大学も、学生の支援に力を入れる。学生の自殺が続いた富山大は21年、「自殺防止対策室」を設置し、昨年度から学生支援センターが業務を引き継いだ。教職員に対して自殺防止の基礎知識をレクチャーするほか、学生が入居するアパートの大家にも、異変を察知した際、早期に連絡するよう依頼している。

 一方和歌山大は、就活をきっかけに不登校になる学生が多いと分析。同じような悩みを抱えた学生同士で語り合うプログラムを組むなどして、心のケアにあたっている。同大保健センターの関係者は「毎年、夏が近づくにつれて思うように内定が得られない学生からの相談が増える傾向にある。人生初の挫折経験が就活という学生も多く、最悪の場合、生きる気力を失う者もいる」と指摘する。

 警察庁の統計では「進路に関する悩み」を原因とする大学生の自殺も7年間で465人に上った。就活事情に詳しい関西大の森岡孝二名誉教授(企業社会論)は「就活が原因と特定されるケースはごく一部。実際の就活自殺者数は、統計の数倍規模になるのではないか」と指摘する。

 就活自殺は被害と加害の関係がはっきりせず、大学や家庭も事実を内密にするため、問題が表面化しにくいといい、森岡名誉教授は「対策はもちろんだが、根本的には学生が安心して就職できる正社員の雇用量を確保する必要がある」としている。

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