性同一性障害、指針なく悩む現場 「差別」と公務員提訴

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朝日新聞デジタル 2015年11月14日

写真・図版:提訴後に記者会見した経済産業省職員=13日午後、東京・霞が関(省略)

 性同一性障害で、心は女性だが戸籍上は男性の経済産業省職員が13日、女性トイレの使用を制限されるといった差別を受け「人格権を侵害された」などとして、国に処遇改善と1655万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。弁護団によると、性的少数者が職場での処遇改善を求める訴訟は初めて。

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 訴状によると、この職員は40代。入省後の1998年ごろ診断を受けてホルモン治療を始め、今では初対面の人にも女性と認識される。経産省は2009年に申し出を受け、女性の服装などは認めたが、戸籍上の性別が男性である限り、女性トイレの通常使用は認められないと判断。障害者トイレの使用を促し、女性トイレを使いたければ異動ごとに職場で同障害を公表するよう求めた。

 日本で性別変更するには性別適合手術が必要だが、この職員は皮膚疾患などで手術が受けられなくなった。上司から「手術を受けないなら男に戻ってはどうか」などと言われ、精神的苦痛からうつ病で1年以上休職した、としている。記者会見では「私は男と女の中間ではなく女性。他の女性と同等で公平な処遇を求めているだけ」と語った。

 経産省は「訴状が届いておらず、お答えできない」とコメントしている。

 同障害を巡っては、日本精神神経学会が97年に診断・治療の指針を策定。04年には性別変更を認める特例法が施行され、社会的な認知度が高まった。同障害の人が働く現場では服装や改名、健康診断などで対応が求められるケースが増えているが、処遇に関する国の統一的な指針はない。

 ログイン前の続き企業などが難しい対応を迫られるのが、就職した後で性別の取り扱いを変えるケースだ。戸籍上の性別を知る同僚が多いと、職場での説明などが必要になるからだ。ホルモン治療などで外見を心の性に合わせるのにも時間がかかる。

 今回の訴訟で焦点になっているトイレの問題はとりわけ複雑だ。「心は女性だが戸籍上は男性」の場合、他の女性社員の反応を気にする企業側が、女性トイレの使用を拒否したり障害者トイレの使用を求めたりする例も少なくない。化粧品会社のラッシュジャパンはトイレも含め社員を心の性で処遇しているが、心は女性の社員が店舗のあるビルの女性トイレを使おうとして、管理者から使用を拒まれたケースもあるという。

 企業の研修を手がけるNPO「虹色ダイバーシティ」の村木真紀代表は「正しい知識と当事者の苦しさを伝えれば、理解を得られることが多い」と話す。(二階堂友紀)

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 〈性同一性障害〉 体の性と自分が認識する心の性が一致せず、持続的に苦悩がある状態。日本で性別変更するには、?20歳以上?結婚していない?未成年の子どもがいない?生殖機能がない、などが要件。?を満たすには性別適合手術が必要で、心身面や金銭面の負担も大きい。

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